プラークと呼ばれている歯垢(しこう)は、虫歯や歯周病の原因です。歯垢が付着して時間が経(た)つほど、石灰化します。歯垢が石灰化したものを歯石と言い、除去しにくくなるのです。プラークはコントロールすることで、虫歯や歯周病などを防ぐことができます。では、どうすれば、歯垢を除去でき、効果的な予防ができるのでしょうか。本記事では、歯垢の基礎知識やセルフチェック・除去法・予防策・歯医者の選び方について説明します。
この記事を読むことで、歯垢を除去するために必要な知識を身につけ、効果的な予防をすることができます。歯垢の除去について知りたい方や歯周病が気になる方は、ぜひ参考にしてください。
歯垢の基礎知識
歯垢を取りのぞくためには、それがどういうものなのか知識を身につけておかなければなりません。ここでは、概要や原因・歯石との違い・問題点・たまりやすい人について説明します。
1-1.どんなものか
歯垢はプラークと呼ばれており、細菌の塊です。食べかすが集まってできたもの、と思われがちですが、まったく別ものになります。歯垢は、細菌と代謝物の塊で、歯の表面に付着する白色・黄白色のネバネバとした物質です。通常、細菌は歯に付着しても多くは唾液で流されます。しかし、付着した場所や口腔(こうくう)環境によっては、唾液で流すことができず、その場で増殖を始めてしまうのです。プラークには、1mgにつき約1億以上の細菌が含まれています。
1-2.できる原因・できやすい場所
歯垢ができるのは、食後8時間後と言われています。ほとんどの歯垢は唾液が流してくれますが、歯磨きを怠ってしまうと歯垢が硬くなり、なかなか除去できなくなってしまうのです。さらに、甘いものや油ものばかり食べていると、除去しにくい場所に付着してしまいます。歯垢ができる原因は、歯磨きの仕方や生活習慣に原因があると言えるでしょう。
歯垢ができやすい場所は、主に5か所あります。歯と歯の間、奥歯のかみ合わせ、歯と歯茎の境目、抜けた歯のまわり、歯と歯が重なったところです。これらの場所は、入念に歯磨きをしなければなりません。
1-3.歯石との違い
歯垢の付着が進行して硬くなれば「歯石」になります。磨き残した歯垢が、唾液中に含まれているミネラルと結合して硬くなる仕組みです。歯垢が付着して約2日間で歯石になると言われています。歯石に進行してしまえば、歯磨きや唾液で取りのぞくことはできないため、歯医者で除去してもらうことになるでしょう。
1-4.歯垢の問題点
歯垢は、虫歯・歯周病・口臭の原因です。歯垢の中に含まれている細菌は、食べものの糖分を栄養源にして増殖し、歯石になります。ネバネバした物質をつくり出し、歯の表面に強い力で付着するため、できるだけすぐに取りのぞかなければなりません。細菌が増殖するほど虫歯菌も増え、歯周病も進行してしまいます。また、ネバネバした物質からひどい臭いが発生するのです。虫歯・歯周病・口臭を改善するためには、歯垢を取りのぞくことが大切でしょう。
1-5.たまりやすい人
歯垢がたまりやすい人は、食生活や生活習慣が乱れている人に多い傾向があります。歯垢は、糖分を栄養分として増殖するため、ファストフードやコンビニ弁当・お菓子・レトルト食品ばかり食べている人ほど、たまりやすいのです。また、歯磨きのやり方が悪ければ、歯垢がたまりやすくなるので気をつけなければなりません。
歯垢のセルフチェック
口の中がどのような状態になっているか、自分で直接確かめることはできません。しかし、生活習慣や食生活を見直すことで、歯垢のセルフチェックができます。以下の項目にいくつ当てはまるのか、ぜひ試してみてください。
- 朝起きたときに、口の中がネバネバする
- 歯の根元がしみる
- 口臭を感じるようになった
- 歯垢・歯石がついていると思う
- 歯と歯の間に、よく食べものがはさまる
- 甘いものや油ものをよく食べる
- 歯が長くなったように見える
- 硬いものをかむと痛い・かめない
- 歯磨きをサボるときが多々ある
以上の項目に当てはまる人が多いほど、口腔環境が悪く、歯垢がたまっている可能性があります。念のため、歯医者に診せたほうが良いでしょう。
歯垢の除去について
歯垢の除去は、自分で行う場合と歯医者で行う場合があります。それぞれの方法と注意点について、一緒にチェックしていきましょう。
3-1.自分で行う場合
自分で歯垢を取りのぞく方法は、歯磨きとデンタルフロスの活用です。ほとんどの歯垢は、唾液と歯磨きで取りのぞくことができます。食後8時間後に歯垢が出来始め、2日間で歯石になるのです。歯石になると歯磨きでは除去できないので、できれば食後30分以降に歯磨きをしてください。歯の表面のエナメル質が溶けてしまう病気「酸蝕症(さんしょくしょう)」の人は、すぐ磨くと危険です。食後は口の中が酸性になっているため、通常より歯が傷つきやすい傾向があります。そのため、食後1時間以降に歯磨きをしましょう。
そして、歯磨きをした後はデンタルフロスで仕上げをします。デンタルフロスは、歯ブラシで除去できない歯と歯のすき間にある歯石が除去できるのでおすすめです。
3-2.歯医者で行う場合
歯医者では、自分で除去できなかった歯垢を取りのぞくことになります。4mm以上の歯周ポケットは歯ブラシやデンタルフロスでも届かないため、歯医者で専用の道具を使いながら取りのぞくことになるでしょう。また、歯医者によっては、超音波の振動を加えて細菌・歯石を破壊しながら除去することもあります。
3-3.注意点
自宅できちんと歯垢を取りのぞいておけば、歯医者に通う必要がないと思っていませんか? 誤った歯磨きの仕方やケアをすると、取りのぞける歯垢が残ってしまいます。その結果、時間の経過とともに歯石になり、ホームケアで除去できなくなるのです。大切なのは、歯磨きやデンタルフロスでセルフケアをしながら、定期的に歯医者へ通うことでしょう。自宅と歯医者のダブルケアによって、歯垢・歯石をある程度取りのぞくことができます。
歯垢の予防について
健康な歯を維持し続けるためには、予防が最も大切です。歯垢を予防するために、プラークコントロールや自分でできること・歯医者での予防歯科など知識を深めておきましょう。
4-1.プラークコントロールについて
プラークコントロールは、予防歯科の基本で、口腔内の細菌をコントロールすることです。細菌が増える原因を突き止め、量を減らすためのホームケアを行います。難しく感じる方もいると思いますが、毎日行っているブラッシングを見直したり、習慣を改善することで良いのです。特別に何かをする必要はなく、日ごろしていることを見直して改善することが、プラークコントロールにつながります。
4-2.自分でできること
ホームケアの方法としては、歯磨きと生活習慣・食生活の改善です。毎日ブラッシングをしていても、やり方が適切でなければ意味がありません。定期的な検診で、歯科医師に正しい歯磨きの方法を教えてもらいましょう。そして、最低でも1日2回、丁寧な歯磨きを続けてください。また、生活習慣・食生活が乱れている方は改善することが大切です。外食やコンビニ弁当・ファストフードを控え、自炊を心がけましょう。栄養バランスの良い食事や規則正しい生活習慣は免疫機能を発達させ、細菌が増殖しにくい口腔環境をつくることができます。
4-3.歯医者での予防歯科
虫歯ができたら歯医者に行く考え方では、一向に予防できません。虫歯や歯周病になる前にケアすることが、予防歯科の目的です。予防歯科では、歯石になりそうな歯垢を取りのぞいたり、虫歯になりやすい部分の早期治療を行います。予防歯科の効果を発揮するためには、定期的に検診を受けることが大切です。
4-4.注意点
歯医者で受ける検診はもちろんのこと、日々の生活習慣が大きなカギとなります。なぜなら、歯医者で歯垢を除去してもらっても、日々の生活に乱れが生じていては再び付着してしまうからです。「歯医者に通っているから大丈夫」とあまく見てはいけません。この機会に、生活習慣や食生活・ブラッシングのやり方を見直してくださいね。
歯医者の選び方
適切な処置を受けるためには、歯医者選びが重要なポイントとなります。ここでは、歯医者選びのポイントや歯垢の治療・費用・注意点についてチェックしていきましょう。
5-1.歯医者選びのポイント
歯医者選びで悩んだときは、以下のポイントに注目してください。
- 丁寧な対応で詳しく説明してくれるか
- 予防歯科や虫歯・歯周病ケアなどに力を入れているか
- 予約しやすいか
- 口コミ・評判が良いか
- ホームページに院長・担当医・歯科衛生士などの紹介があるか
- 必要な設備が整っているか
- 明確な料金表が記載されているか
特に、チェックしてほしいポイントは歯科衛生士やスタッフなどの雰囲気です。居心地が良く、丁寧な説明をしてくれるところを選びましょう。きちんと原因を調べ、適切な治療法について提示してくれるのか、対応も要チェックです。
5-2.歯垢の治療について
歯医者では、歯周ポケットを中心にPMTC(プロフェッショナルメカニカルトゥースクリーニング)と呼ばれる方法で、歯垢を取りのぞきます。専用の研磨剤を使い、最後の仕上げとしてフッ素のコーディングも行う方法です。歯石が付着している場合は、スケーリングと呼ばれる手法で除去します。状況に合った方法で除去してくれるので、安心してください。
5-3.費用について
気になる歯垢除去の費用は、保険内であれば約3,000~4,000円です。検査料・レントゲン撮影料金・初診料金が含まれているか否かは、歯医者によって異なるので注意してください。自費治療内のクリーニングであれば、約5,000~20,000円です。
5-4.注意点
「治療を受けたのに虫歯になった」「歯垢・歯石が除去できていない」など、歯医者との間でトラブルも起きています。残念ながら、中にはきちんと治療を行っていない歯医者も存在しているのです。また、担当歯科医師の経験が浅く、知識が乏しい場合も、治療に不手際がある可能性があります。トラブルを避けるためには、慎重に歯医者を選ぶことが大切です。
歯垢に関してよくある質問
歯垢に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。
6-1.歯垢を放置するとどうなるのか?
歯垢を放置すると石灰化して、歯石になってしまいます。さらに、歯石を放置していると、虫歯や歯周病・口臭が悪化し、最悪な状態になれば抜歯しなければならなくなるのです。「治療費をかけたくないから」と先延ばしにするのではなく、早めに受診してください。早期治療を受けたほうが、費用も抑えることができますよ。
6-2.定期検診の頻度はどのくらいか?
定期検診は3~6か月に1回通うのが理想とされています。口腔ケアを徹底している方のほとんどは、3か月に1回の歯垢除去を行っているようです。定期検診は、虫歯・歯周病の要因を素早く取りのぞく効果があるため、健康的な歯を維持し続けることができます。
6-3.歯垢除去におすすめの歯ブラシが知りたい
ブラッシングに必要な歯ブラシは、毛先がやわらかいタイプを使ってください。毛先が硬く、開いている歯ブラシは、きちんと歯垢を取りのぞくことができません。月に1回程度、歯ブラシを交換することが大切です。
6-4.歯磨き粉は何を使えば良いのか?
歯を磨くときは、歯磨き粉を使ったほうが歯垢を取りのぞくことができます。ただし、歯磨き粉の中には刺激が強すぎる成分が入っているものもあるため、選び方が重要です。できれば、刺激が少なく、歯茎の炎症を抑える薬やフッ素が含まれているものを使いましょう。どの歯磨き粉を使えば良いのか悩む方は、歯医者に相談すると良いですよ。
6-5.歯垢の種類は?
歯垢は、歯肉縁上プラークと歯肉縁下プラークの2種類があります。歯肉縁上プラークは、歯の見えている部分についているもので、虫歯・歯周病の原因です。歯肉縁下プラークは、歯周病が進行して形成する歯周ポケットの中に付着し、肉眼で確認できません。そのため、歯医者での歯垢除去が必要となります。
まとめ
いかがでしたか? 歯垢は食べかすではなく、細菌の塊です。ほとんどの歯垢は唾液やブラッシングで取りのぞくことができますが、歯周ポケットや歯と歯の間にある歯垢は取りのぞけません。そのため、定期的に歯医者へ通い、歯垢除去をすることが大切なポイントとなります。ホームケアと歯医者でのケアをきちんと行うからこそ、歯垢を取りのぞき、健康的な口腔環境が維持できるのです。歯垢に関する知識を身につけ、徹底的なケアを続けましょう。