あるとき突然歯痛になって、せっかくの楽しい予定が台無し、なんて経験はありませんか? 仕事や家事に支障をきたし、憂鬱になる歯痛はすぐにでも直したいものですね。しかも、多くの人が、歯痛と頭痛が同時に起こる経験をしています。どちらもごくありふれた症状ですが、いつもの痛みだと思い軽く見ていると、重大な病気が潜んでいる可能性もあるのです。この記事では、歯痛と頭痛の関連に着目し、少しでも早く治したい歯痛と頭痛の対処法をご紹介します。
歯痛を起こしやすい人は、日頃からの備えが大切です。この記事を参考に、痛みにどう対処したらいいか知識と行動力を養いましょう。
歯痛と頭痛の関連
歯痛になると頭まで痛くなることがあります。それはなぜなのか、まずは、歯痛と頭痛について知りましょう。
1-1.歯痛とは
歯痛は主には虫歯が原因で起こります。虫歯になると、増殖した細菌が酸を作って歯を溶かして神経を侵したり、歯茎に炎症を起こしたりして痛みを感じるのです。また、かみ合わせや歯並びが悪いことで歯茎が圧迫・摩擦され、歯周ポケットに炎症が起こることもあります。
1-2.歯痛と頭痛は併発する?
歯が痛くなると頭痛を感じたり、逆に、先に頭痛を感じ、歯まで痛くなったりしたという経験はありませんか? どちらが本当の原因かがわからないと、見当違いな治療をしてしまうこともあります。なぜ併発するのか、原因を知ることが大切です。
1-3.歯痛と頭痛が同時に起きるメカニズム
歯痛と頭痛が同時に発症するのは、歯やあご周辺の筋肉や神経が肩・首を通して頭部につながっていることが関係しています。一方に痛みがでてバランスが崩れると、他方にも影響してしまうのです。たとえば、虫歯やあご周辺に疾患がある場合には、痛みを避けて食べ物を咀嚼(そしゃく)しようとすることから、無理な力が継続的に加わります。その結果として、肩や首のこりや、こめかみ近くの側頭筋の疲労を生み、頭痛に至るケースがあるのです。
歯痛と頭痛が併発する原因は
歯痛と頭痛はお互いに影響しあっていることは前述のとおりですが、ここではどんな病気があるのか具体的に見ていきましょう。
2-1.原因
主な原因としては、細菌の感染によるものと、筋肉の疲労などにより、歯の周辺の痛みが神経を伝って頭に伝達されるものの二つのパターンがあります。
2-1-1.考えられる病気
- 上顎洞炎:虫歯の細菌が上顎洞(副鼻腔)に感染すると、膿が溜まり痛みが出ます。
- 緊張型頭痛:心身のストレスが原因となることが多い頭痛ですが、虫歯が原因の場合は、虫歯を避けて食事をすることで片噛みが癖になり、結果として首や肩のこりを引き起こして頭痛に至ることがあります。
- 顎関節症:虫歯を避けて食事を続けるとかみ合わせがずれることがあります。これにより顎関節症になり、あごの関節の付け根や頭痛を引き起きします。
- 脳静脈血栓症:虫歯がひどくなり細菌が血流にのって脳に運ばれると脳内炎症を起こし、血栓を生じることがあります。
2-2.ほかに注意すべき併発症状
歯痛以外に原因があり頭が痛くなるのはこんな場合です。
- 群発頭痛:頭痛が先行して起き、そのあとに歯痛がきます。虫歯など歯に異常がない場合は群発頭痛かもしれません。
- 副鼻腔炎:副鼻腔炎の膿が歯の根の先や神経を圧迫し、激痛が出ることがあります。歯の根が激しく痛むので、歯痛と間違いやすく注意が必要です。
- 帯状疱疹:免疫力が落ちているときなどに、水ぼうそうのウィルスが暴走して急性の神経炎症を起こします。虫歯のように強い痛みが出ます。
- 脳腫瘍:脳神経の痛みが原因で歯が痛くなることがあります。
2-3.注意点など
歯痛も頭痛も市販薬などで一時的に痛みが治まっても、原因となっている疾患が治ったわけではありません。必ず受診しましょう。
歯痛と頭痛の応急処置
夜中や忙しくて病院に行けないときには、応急処置で急場をしのぎましょう。ただし、あくまでも応急処置なので、後に必ず適切な処置を受けてください。
3-1.応急処置
歯が痛い場合には、まず虫歯に詰まっている食べかすなどがあれば、きれいに取り除きましょう。頭痛は、ヘアバンドやヘアゴムなど、頭部を圧迫しているものがある場合は外しておきます。
3-1-1.市販の鎮痛剤を飲む
痛みが起き始めたら、すぐに市販の痛み止めを飲みましょう。鎮痛剤には痛みの原因物質を抑える働きがあります。少しぐらいと思って我慢してしまうと、痛みの原因物質が大量に分泌されてしまい、痛み止めが効きにくくなってしまうのです。ただし、鎮痛剤は胃を荒らすこともあるので、空腹時は避けるか、胃薬を一緒に飲んでおくといいでしょう。
3-1-2.冷やす
患部を冷やすと痛みが多少和らいで楽になります。歯が痛い場合は頬の側から冷却シートなどを貼ってください。口に氷を含むのは、虫歯の場合はしみることがあるため避けたほうが無難でしょう。
3-1-3.子どもや妊婦の場合
子どもの場合も、基本の対処法は大人と同じですが、鎮痛剤は子ども用のものを服用させてください。小さな子どもは痛みを訴えることがうまくできないため、よく観察してあげましょう。妊婦の場合は安易に市販薬を服用せず、受診したうえで胎児に影響のない薬を処方してもらってください。薬が飲めない場合は、痛みを緩和するつぼを刺激するのもいいでしょう。
- 歯痛点(しつうてん):手のひら側の指の付け根、中指と薬指の間を刺激します。親指と人差し指で挟んで痛いくらいに強めに押しもみしてください。左右交互に繰り返しましょう。
- 合谷(ごうこく):手の甲の親指と人差し指の付け根の間を刺激します。強く押しすぎないように、爪楊枝の束などでトントンと叩いてみてください。
3-1-4.歯痛や頭痛のときにやってはいけないこと
- 痛い歯をいじる:患部を刺激すると余計に痛みが強くなったり、炎症が広がったりするおそれもあります。
- 入浴や激しい運動:血の巡りがよくなると、血流が神経を圧迫し、ズキズキと痛みが増します。
- アルコールを飲む:鎮痛剤とアルコールを同時に飲むのは危険です。絶対に避けましょう。鎮痛剤を飲んでいない場合も、一時的に痛みを忘れることはあっても、血流がよくなりかえって痛みを強く感じてしまいます。
歯痛と頭痛の治療について
4-1.病院に行くべき症状
長引く痛みや我慢できない痛みなど、通常と違う痛みが出た場合は、早めに病院へ行きましょう。
4-1-1.歯科・口腔外科
虫歯や歯茎など明らかに口の中に疾患がある場合は、歯科を受診します。顎関節症の場合も、歯科・口腔外科へ行きましょう。
4-1-2.耳鼻咽喉科
歯に異常がないのに上の奥歯が痛い、頬や眉間に重たい痛みが長引く場合は、副鼻腔炎かもしれません。耳鼻咽喉科を受診してみましょう。
4-1-3.脳神経外科
日常生活に支障をきたすような目の奥の激痛は、群発頭痛の可能性があります。脳神経外科や頭痛外来を受診してください。
4-2.検査
それぞれの診療科で症状に合わせた検査が行われます。原因を特定するためレントゲンを撮ったり、場合によってはCTスキャンを取る場合もあるでしょう。
4-3.治療方法
虫歯が原因の頭痛は、まずは虫歯をきちんと治療することから始めます。その上で噛み合わせの治療などに進むでしょう。副鼻腔炎は、抗生物質による薬物療法や局所療法が用いられます。群発頭痛の治療は薬物療法と酸素吸入法による治療が中心です。
4-4.歯医者の選び方
検査設備が整い、ていねいに検査・治療をしてくれる歯科を選びましょう。歯痛と頭痛を併発している場合には、受診の際には、歯の痛みだけでなく頭痛やほかの気になる症状も相談することで、総合的に判断してもらうことができます。
4-5.注意点
歯科の治療は長い期間を要することがあるため、最後まで通うことが大切です。痛みがなくなっても歯根の治療などが完了していないと、細菌が増殖し、新たな疾患の引き金となってしまうので、気をつけましょう。
よくある質問
Q.歯医者に行って頭痛は治りますか?
A.頭痛の原因が虫歯など歯に関する疾患だった場合は、まず原因となる歯科の治療をすることで頭痛も改善するでしょう。
Q.妊娠中に市販の鎮痛薬を飲んでもいいですか?
A.鎮痛薬は胎児の発育に悪影響を及ぼす恐れがあります。胎児に影響のない薬を病院で処方してもらってください。
Q.肩こりがひどいと歯も痛くなるでしょうか?
A.猫背など姿勢が悪いと筋肉が緊張して肩こりの原因となります。同時に、首が前傾して下あごが後ろへ引っ張られて、かみ合わせが悪くなることがあり、歯痛を起こすことがあるでしょう。
Q.頭痛というのは、脳みそが痛いのですか?
A.頭蓋骨や脳そのものは痛みを感じません。頭が痛いという場合は、頭部の血管や神経、筋肉、骨膜、硬膜などの組織に痛みがあるのです。こられが圧迫されたり引っ張られたり、炎症を起こしたりすることで痛みを感じます。
Q.なぜ歯は夜中に痛くなるのですか?
A.ズキズキした痛みの場合、横になることで首から上への血流が増し、血管が膨張して神経を圧迫することで痛みを感じやすくなります。また、夜間は副交感神経が優位になり、リラックスした状態になるため、血流増加が起こるのです。
まとめ
やっかいな歯痛と頭痛は、放っておくとますます困った事態を引き起きしかねません。市販薬でごまかさないで、痛みがひどくなる前に、受診しましょう。どの診療科を受診したらいいのかわからない場合は、まずは歯科を受診して歯に異常がないか検査を受けることをおすすめします。痛みの原因を特定し、しかるべき治療を受けましょう。