歯周病の治療法として、光殺菌治療に注目が集まっています。歯周病は、成人の80%がかかっていると言われ、放置すると歯が抜け落ちてしまう怖い病気です。早期に治療を受け、きちんと治しましょう。しかし、歯医者に通うのが「痛い」「怖い」というイメージがある人にとっては、簡単なことではありません。光殺菌治療なら、治療時の痛みもないので怖くなくおすすめです。
今回は、光殺菌治療について詳しく解説します。
この記事を読むことで、光殺菌治療に関する理解が深まり、治療を受けるときに役立ちます。適切な歯医者選びのポイントも分かるのでぜひ読んでみてください。
1.光殺菌治療とは
最初に、光殺菌治療の定義・メカニズム・目的について解説します。
1-1.光殺菌治療の定義について
光殺菌治療とは、細菌に感染した部分に光感受性ジェルを塗って特殊な光を照射する方法です。PDT(フォトダイナミックセラピー)と呼ぶこともあります。光が当たった部分では、活性酸素を発生することにより殺菌するのです。
1-2.光殺菌治療のメカニズム
光感受性ジェルを塗布すると、細菌の細胞壁などにジェルの成分が取り込まれます。次に特殊な光を照射することによって光感受性ジェルが化学反応を起こし、大量の活性酸素が発生するのです。活性酸素は、細菌の細胞壁などを破壊することで強い殺菌効果があるため、病巣部の殺菌が期待できます。最後にジェルごと流してしまえば、治療は完了です。なお、ジェルを塗ったところだけに効果があるため、ほかの部分には影響を与えません。
1-3.光殺菌治療の目的
光殺菌治療の目的は、患者に苦痛を与えることなく、また歯周組織を破損せずに治療を進めることです。歯周病を放置してしまいがちな人は、歯医者嫌いであり、痛みに弱い傾向があります。光殺菌治療なら痛みが発生せず、スムーズに治療を受けてもらえるため、歯周病の完治に役立つのです。
2.歯科医における光殺菌治療の特徴を学ぼう
歯科医における光殺菌治療について、詳しく解説します。どんな病気に有効かをはじめ、主な特徴や通常の治療との違いについて学びましょう。
2-1.光殺菌治療とはどんな病気に有効か
光殺菌治療は、殺菌効果を期待して行うものです。そのため、原因が細菌による病気に有効となります。主なものに関しては、以下をご覧ください。
- 歯の根の治療
- 歯周病
- インプラント歯周炎
- 歯冠周囲炎
- アフタ(口内炎)
- 口内ヘルペス
2-2.光殺菌治療の特徴
光殺菌治療は、抗生物質を使わないことで耐性菌が発生しないというメリットがあります。さらに、繰り返し治療を受けても副作用の心配がない点も特徴です。なお、従来の治療法と併用することで、相乗効果を期待できます。
2-3.通常の治療と光殺菌治療の違い
通常の治療と光殺菌治療の違いを、メリットとデメリットでそれぞれ解説します。
2-3-1.メリット
光殺菌治療は、従来の治療法と比べて以下のようなメリットがあります。
- 歯や歯ぐきを傷付けたり削ったりしない
- 治療時の痛みがない
- 歯周ポケットなどの深い部分でも治療可能
- 妊娠中でも治療可能
- 耐性菌が発生しない
- 副作用がない
2-3-2.デメリット
光殺菌治療にも、以下のようなデメリットがあります。
- 治療費が高くなる(保険適用外)
- 光過敏症がある人には使用できない
3.光殺菌治療の流れや方法を解説
光殺菌治療の流れや方法について、具体的に解説します。費用や注意点についても理解しておきましょう。
3-1.光殺菌治療の具体的な治療方法や流れについて
光殺菌治療では、具体的に以下のような流れで進みます。
- 感染源の治療(歯垢や歯石の除去、歯の根周辺の掃除など)
- 光感受性ジェルの塗布
- 光線照射による殺菌
- 光感受性ジェルの洗浄
3-2.光殺菌治療の費用について
光殺菌治療は、保険適用外で、治療費用は全額自己負担となります。治療費が心配なときは、事前に費用の概算を出してもらうといいでしょう。費用負担が大きいために歯医者から足が遠のいて治療が進まないのでは困ります。無理なく治療を続けていくためにも、治療費に関する不安をなくしておきましょう。
3-3.光殺菌治療の流れや方法に関する注意点
光殺菌治療自体には、痛みは発生しません。しかし、感染源の治療を行う際には、炎症部分が痛むことがあります。痛みに弱い人は、麻酔(ますい)を使えるか相談しておきましょう。また、光殺菌治療を受けている最中でも、強い違和感を覚えたり体調不良を感じたりしたときは、速やかに申し出てください。
4.光殺菌治療の歯医者選びについて
光殺菌治療を受けるには、信頼できる歯医者を選ぶことが大切です。選び方のポイントについて詳しく解説します。
4-1.信頼できる歯医者選びのポイント
光殺菌治療を受ける人は、歯医者選びにも気を配りましょう。たとえば、以下のポイントに当てはまるところをおすすめします。
- 歯医者として豊富な実績がある
- 常に向上心に満ちており最新の治療法や機器を導入している
- 治療の品質が高く、患者からの評判がいい
- 光殺菌治療を積極的に行っている
- 治療方針の説明が丁寧でわかりやすい
- 治療費用が明確なシステム
- 院内設備や器具の整理や清掃が行き届いている
- 自宅などから近くて通いやすい
- 希望の日時に予約を入れることができる
4-2.光殺菌治療学会について
光殺菌治療は、まだ新しい治療法であり、さまざまな部分で研究段階です。たとえば、「光・レーザー離床研究会」では光殺菌治療に関するセミナーや勉強会を開催しています。また、導入している歯医者も少ないことから、普及活動に力を入れている最中なのです。上記の団体をはじめとする光殺菌治療学会では、光殺菌治療に関する正しい認識と具体的な治療方法・効果などを広め、技術の進歩に貢献しています。
5.光殺菌治療に関するよくある質問
最後に、光殺菌治療に関するよくある質問に回答します。治療を受ける前に、不安や疑問をなくしておきましょう。
5-1.光殺菌治療は虫歯には効果がないのですか?
虫歯の原因は、虫歯菌が出した酸が歯を溶かしてしまうことによります。従って、虫歯菌の殺菌という意味では、治療効果を期待できるでしょう。しかし、光殺菌治療だけで完了するとは言い切れません。たとえば、病状が進んで歯が大きく欠けたり穴が開いていたりする場合は、修復が必要となります。
5-2.光殺菌治療は子どもや高齢者でも受けられますか?
痛みや副作用がないというメリットがあるため、光殺菌治療は子どもや高齢者にもおすすめです。特に、子どもは歯医者嫌いが多いので光殺菌治療は向いていると言えます。また、高齢者にとっても、歯周病治療は大切なテーマです。光殺菌治療のように、患者の負担が少ない方法であれば、面倒がらずに通い続けてもらいやすくなります。
5-3.光殺菌治療を受ける前に準備することはありますか?
通常の通院と同様の準備をしてください。治療を受ける前には、エチケットとしてきちんと歯みがきをしておきましょう。また、直前の食事で強いにおいがする食べ物を摂(と)らないようにすることも忘れないでください。歯医者では患者の強い口臭には慣れているとはいえ、恥ずかしい思いをしなくて済みます。
5-4.光感受性ジェルを間違えて飲み込んでも大丈夫ですか?
光殺菌治療に使う光感受性ジェルは、飲み込んでしまっても人体に害があるものではありません。万が一、飲み込んでしまっても安心してください。しかし、積極的に飲んでいいわけでもないため、治療中はできるかぎり飲み込まないように気を付けましょう。
5-5.光殺菌治療を受ければ歯周病の再発を予防できますか?
光殺菌治療により歯周病が完治した場合でも、新たに歯周病菌が繁殖して再発することがあります。歯周病菌の繁殖が原因であるかぎり、完全に予防するのは難しいと考えてください。しかし、普段から丁寧な歯みがきをし、定期検診・メンテナンスにて光殺菌治療を取り入れることができれば、再発の可能性を低くすることは可能です。
まとめ
今回は、光殺菌治療について詳しく解説しました。光殺菌治療は、歯周病などの治療で画期的な方法として注目が集まっています。痛みがなく・歯周組織を傷付けずに治療できるのは大きなメリットです。歯医者嫌いな人も、苦痛を覚えることなく最後まで治療を続けられることでしょう。歯周病は、放置すると歯が抜け落ちるなどの原因になります。光殺菌治療をはじめ、きちんと治療しておきましょう。信頼できる歯医者を選んで、満足できる結果を手に入れてください。