体調不良を感じるとき、風邪などで調子が悪いと思い込んでいる方は、かなり多くいらっしゃいます。肩こりや頭痛などの不定愁訴が現れることもあり、生活の乱れやホルモンバランスの変化だと、自己判断されていませんか?
実は、歯と全身の症状は大きく関連しているのです。歯は、食べ物や酸素を取り入れる、人間の体に取って大切な入り口となる器官。特に口腔(こうくう)内の異常は、体調不良や全身の状態を見る鏡だといっていいでしょう。
風邪だと思うと内科、体が痛むと整形外科、頭痛がひどい場合には脳神経内科など、専門医に受診することが多いはずです。
肩こりや腰痛のような慢性化しやすい症状は、実は口腔(こうくう)内の環境が影響していることが多いもの。注目したいのは、噛み合わせです。噛み合わせの悪さは、全身にさまざまな影響を及ぼすことがわかっています。
噛み合わせを重要視していなかった方は、ご自身の症状と照らし合わせて、参考にしてみてください。
1.噛み合わせの悪さが体に与える影響
噛み合わせは、歯が上下左右にきれいに並んだ状態で噛(か)むことができ、筋肉や顎関節への負荷がかからずに噛(か)むことができることが、理想的です。
噛み合わせは、口腔(こうくう)内だけの問題だと軽視してしまいがち。しっかり噛(か)めないことにより、ふんばりが効かないなど全身バランスへの影響や、体調不良の原因にもなります。
噛み合わせが悪いことで、体にどのような影響が出てくるのでしょうか?
生活習慣の見直しや、体調不良がなかなか解消しない方は、こちらを参考にしてみてください。
1-1.虫歯になりやすい
噛み合わせが悪いと、日々の歯ブラシを徹底して行っていても、細かなポイントまで行き届いていないことが多いようです。隣同士の歯が接触していることで、食べカスが詰まりやすく、残りやすい環境を生み出します。
反対に、噛み合わせがいい方は、本来噛(か)むことで食べ物を噛んで汚れがつきにくくなったり、口腔(こうくう)内に残った食べ物を落とす力を持っていたりするものです。
噛み合わせが悪いと、口腔(こうくう)内の残留物を排出する力が少なく、食べカスを残してしまう傾向にあります。噛み合わせが悪いと、食べカスなどの付着物や残留物による虫歯を招く恐れがあるでしょう。
1-2.歯周病
歯周病は、年齢を重ねるごとにリスクが上昇するといわれています。加齢によって、免疫力が低下していき、口腔内にある細菌などに感染しやすく、歯肉が弱くなってくることが原因です。
噛み合わせと歯周病の関連は、噛(か)みやすい方の歯を中心に噛(か)む癖がついてしまい、よく噛(か)む方の歯に負担がかかってしまうために起こります。
歯科医院での定期的なケアやクリーニングによって、歯周病は悪化する前に治療することができ、早期発見早期治療が大切です。
1-3.顎関節症
顎関節症は、どの方にも起こりうる病気ですが、噛み合わせの悪い方はそのリスクが上昇し、悪化傾向をたどるようです。
噛み合わせが不安定であるために、顎関節への負荷がより多くかかってしまいます。顎関節症は、頭痛や肩こりなどの症状を感じることがあるでしょう。
顎は、頭の側頭部にある、側頭筋と連結していて、側頭筋のマッサージで、頭痛を緩和することができます。症状が進行すると、口が開けにくくなり、顎に強い痛みを抱くこともあるでしょう。
全身バランスが崩れることで、姿勢に影響し、腰痛を起こすこともあります。
1-4.自律神経への影響
理由は思い当たらないけれど、何だか最近調子が悪い。頭痛や腰痛、顎の痛みに悩まされている方もいます。メンタル面での心配をされるケースも多く見ることができますが、頭痛や顎の痛みなどを自覚している場合、噛み合わせによる自律神経の乱れを引き起こしているのでしょう。
日常的にストレスを強く感じている方は、特に症状が現れやすく、放置しておくと長引く恐れもあります。早めの処置がおすすめです。
2.噛み合わせが悪くなる原因
噛み合わせは、全身への症状が心配される注目すべきポイントです。しかし、噛み合わせの悪さは、さまざまな原因によって起こるとされています。
2-1.遺伝
1番わかりやすい原因として挙げられるのは、遺伝的要素です。親が歯並びが悪く、噛み合わせに違和感を抱いている人だと、まれに子どもにも遺伝するのではないかと心配されるでしょう。出っ歯・受け口・八重歯など、噛み合わせとは一見関連がないように思うことも、実は同じように噛み合わせが起因しています。
乳歯期は、歯と歯の間に、ほんの少しすき間がある状態が理想的です。永久歯は、乳歯の1.5倍。すき間が狭いと、歯同士が押され合い、歯並びがガタガタになりやすいようです。
2-2.指しゃぶり
乳児期に指しゃぶりをする癖が、いつまでも抜けない子どもは要注意です。自然と指で歯を内側から押してしまい、歯並びに影響することがあります。長期間おしゃぶりを続けている場合も、同様の影響が考えられるでしょう。
乳児期・幼児期の習慣は、気持ちを切り替えるアイテムを用意して、1日も早く卒業できるように努力していきましょう。
2-3.虫歯や治療後に歯を放置
痛みなどの自覚症状がないため、虫歯を放置し続けてしまうと、リスクが高まります。特に、虫歯などが原因で抜歯することもあるでしょう。
痛みのある部分を抜歯したことで安心してしまい、治療に行かずに放置しておくと、本来あるべき歯の場所からずれが生じて、歯並びや噛み合わせが変わってしまうことがあります。
2-4.生活習慣
誰にでも生活していく中で、ついやってしまう仕草があるでしょう。女性なら、頰杖(ほおづえ)をつく・うつぶせ寝など、知らず知らずに楽な姿勢になっていませんか?些細(ささい)な日常のひとコマが、噛み合わせへ影響します。気づいたら、姿勢を変えるなど、自分の姿勢や仕草に注意してみてください。
3.噛み合わせをよくする方法
歯並びのよさは、見た目の印象もよくしてくれます。歯科医師の多くは、「咬合(こうごう)と全身症状」に着目しているほど、健康を維持していく上で大切なことです。歯並びは遺伝だと諦めている方は、噛み合わせをよくする方法を参考にしてください。
3-1.マウスピース矯正
矯正と聞くと、ワイヤーを使った高額な治療を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか? マウスピース矯正は、顎関節症などの症状があれば、保険診療の範囲内で治療を受けられる、ハードルの低い治療法です。
自分の歯に合った型を取り、噛み合わせに合うマウスピースを作成して、自宅で装着する方法。
つけっ放しでいることはなく、1日に1時間でも毎日継続して続けていくことが大切です。圧迫感や痛みもないのが特徴。噛(か)み締めが強い部分は劣化が激しく、定期的なメンテナンスが必要でしょう。
3-2.舌体操
噛み合わせは、ずれを解消することが大切です。また、今は噛み合わせに問題がない場合でも、舌体操を行い、噛み合わせが悪くならない予防をしていきましょう。
舌を回す体操です。歯の外側をぐるっと2〜3秒かけて1周してください。唇をとじたまま行います。左回し・右回しと各20回ずつを、1日3回やってみましょう。顔周りの筋肉のストレッチになり、効果的でしょう。
舌を押す体操です。上顎の歯茎を舌の先を使って、力を込めて押してみましょう。舌を回す体操と合わせて、1日3回やってみてください。
口周りの筋肉を育てることで、噛み合わせがずれるのを防いでくれます。
4.まとめ
歯の噛み合わせが悪いと、全身への影響が心配されます。遺伝的要素もありますが、日常生活の何気ない仕草を改善することで、噛み合わせが悪くなるのを防ぐことができるでしょう。
- 噛み合わせの悪さが体に与える影響
- 噛み合わせが悪くなる原因
- 噛み合わせをよくする方法
普段から、噛み合わせの悪化を防ぐ体操を取り入れ、顔周りの筋肉を育ててあげてください。