歯を失う原因の多くは、虫歯か歯周病によるものです。特に歯周病が原因で歯を失うことが多いため、普段からしっかりとケアをして予防する必要があるでしょう。歯にはとても重要な役割があり、失うことは私たちに大きな影響を及ぼすことになるのです。どのような歯が失われやすいのか、原因となる歯周病を予防するためにはどうしたらよいのか、知っておくことが大切でしょう。この記事では、歯を失う原因や対策などをまとめてご紹介します。
この記事を読むことで、歯を失わないために知っておくべきことが分かるはずです。ぜひ参考にして健康な自分の歯を維持してください。
1.歯について
まずは、歯の役割や重要性、全身への影響などをご紹介します。
1-1.役割
歯は何のためにあるのでしょうか。具体的な役割を見ていきましょう。
1-1-1.食べものを噛(か)む
まず思いつくのが「食べものを噛(か)む」という役割でしょう。よく噛(か)んで食べることで食べものの栄養をしっかりと吸収できます。胃や腸にかかる負担も少なくできるため、健康に欠かすことのできない役割と考えられるでしょう。
1-1-2.歯ごたえを楽しむ
食べものの歯ごたえを楽しむことも歯の大切な役割です。食べものは味だけでなく、歯ごたえや歯ざわりを楽しむことも必要でしょう。
1-1-3.発音を助ける
美しい歯並びは発音を助けます。歯が失われていたりすき間があったりするときちんとした発音ができなくなってしまうのです。
1-1-4.顔の形を整える
歯並びが悪いと口を閉じていても顔の形がゆがんで見えてしまいます。歯は顔の形を整えて美しい表情を作る上でも重要な役割を果たしているのです。
1-2.重要性
たとえば、虫歯や歯周病などで歯が健康な状態を維持できなくなると、歯並びが悪くなって頭痛や肩こりなどを引き起こします。このように、歯の健康は全身の健康にも関係しているのです。好きなものを食べて「おいしい」と感じ、思いきり話したり笑ったりすることは、健康や生活の質を向上することにつながるでしょう。
1-3.8020運動について
8020運動とは「80歳になっても20本以上自分の歯を保つこと」を目的とした運動のことです。1989年に当時の厚生省と日本歯科医師会が連携し、推進しています。この運動を達成するためにできることは、以下のようなものです。
- デンタルフロスの習慣をつける
- 虫歯や歯周病のリスクを把握しておくこと
- 唾液の分泌量を増やす
- 歯医者で定期的な検診を受け、メンテナンスをする
2.歯を失う原因とは?
歯を失う主な原因や失うとどうなるかなどをまとめました。
2-1.主な原因
歯を失う二大原因は虫歯と歯周病といわれています。特に歯周病による歯の損失は多く、50代以降の半数以上が歯周病で歯を失っていることが分かっているのです。そのほかにも、衝撃による破折や矯正が原因で歯を失うこともあります。
2-2.虫歯と歯周病について
歯を失う原因として多い虫歯と歯周病について詳しく解説します。
2-2-1.虫歯について
虫歯は口の中にいる「ミュータンス菌」によって歯が溶かされてしまうことで起こります。「甘いものを食べると虫歯になる」といわれているのは、ミュータンス菌が糖分によって活発に働く性質を持っているためです。ミュータンス菌は歯垢(しこう)の中で「酸」を作り、この酸が歯を溶かします。酸が作られるまでには少し時間がかかるため、甘いものを食べた後にすぐうがいや歯みがきをすることで虫歯を予防することが可能です。虫歯の基本的な症状は「痛み」であり、初期段階では冷たいものや固いものを食べたときだけ痛みます。放っておくとどんどん進行し、何もしていないときも痛むようになるでしょう。
2-2-2.歯周病について
歯周病とは、歯肉が炎症を起こして歯を支える骨が溶けてしまう病気のことをいいます。直接的な原因は、プラーク(歯垢)の付着によるものです。プラークの中に存在している細菌が歯肉に炎症を引き起こします。歯周病は初期の段階では痛みが出ないため、気づかないうちに進行して歯を失うことになる可能性も十分にある病気です。歯茎の出血や赤み、冷たいものや熱いものがしみるなどの症状に気づいたときは、早期に治療する必要があります。
2-3.失いやすい歯について
失いやすい歯には、以下のようなものがあります。
- 治療せず放置してある虫歯
- クラウンが装着されている歯
- 歯周病が進行している歯
- 食いしばりや歯ぎしりによって負担がかかる奥歯
2-4.なぜ歯を失うのか?
なぜ歯を失うことになるのか、歯周病を例に挙げて、その仕組みをご紹介しましょう。歯を支えている骨のことを「歯槽骨」といいます。歯槽骨にはそれぞれの歯が収まっており、歯を支える役割を果たしているのです。歯周病が進行して歯槽骨が溶けだすと、当然歯は不安定な状態になります。グラつくようになり、最終的には抜け落ちてしまうという仕組みです。
2-5.失うとどうなるのか?
「歯を1本くらい失っても問題ない」と思っている人も多いのではないでしょうか。しかし、歯は全体のバランスが整ってこそ機能を発揮するものであり、失われてしまうことにはさまざまなリスクがあるのです。たとえば、以下のような影響が及びます。
- 食べものを噛(か)む力が弱くなり、栄養を十分に吸収できなくなる
- 正しい噛(か)み合わせができなくなることで運動能力が低下する
- 口元にしわができやすくなり、老化を早める
- 噛(か)むことによる脳への刺激がなくなり、認知症になりやすくなる
3.歯周病チェック
自分が歯周病かどうかをチェックするために、以下の項目でいくつ当てはまるものがあるか確認してみてください。当てはまる項目が1つでもある場合は、歯周病の恐れがあります。すぐに歯医者を受診しましょう。
- 歯茎の色が赤い
- 歯と歯との間にすき間がある
- 歯をみがくと出血する
- 歯茎から膿(うみ)が出る
- 冷たいものがしみる
- 朝起きると口の中がネバネバする
- 口臭がきつい
- 歯茎が腫れている
- 歯がグラグラしている
- 歯が長くなってきた気がする
4.歯を失わないための対策について
歯を失わないために普段から心がけておくべき対策についてご紹介します。
4-1.ブラッシングについて
歯を失う原因として多い虫歯や歯周病を防ぐためには、毎日のセルフケアがとても重要になります。歯と歯茎の境目にプラークを残さないように、歯みがきは丁寧に行いましょう。特に、歯並びが悪い部分や被(かぶ)せものがある部分はプラークが残りやすいため注意が必要です。歯みがきで落としきれない部分は、歯間ブラシを使うとよいでしょう。歯周病の多くは歯と歯の間から進行するため、歯間ブラシを使って完全にプラークを取り除くことは重要なポイントになります。また、プラークの除去に効果的な成分を含んだ歯みがき粉なども販売されているため、使用してみるとよいでしょう。
4-2.定期的なメンテナンスを
虫歯や歯周病になりそうな歯がないかをチェックしてもらうためにも、歯医者による定期的なメンテナンスを受けることも大切です。異常の早期発見や歯のクリーニングによって、歯を失う状態になることを避けることができます。歯のクリーニングは着色汚れや口臭なども改善できるため、定期的に受けておくのがおすすめです。
4-3.そのほかの注意点
虫歯や歯周病を予防して健康な歯を保つためには、生活習慣にも注意が必要です。まず、十分な睡眠をとりストレスをためない生活を心がけましょう。睡眠不足やストレスは抵抗力の低下を招き、虫歯菌や歯周病菌に感染しやすくなります。また、喫煙は歯周病の症状悪化につながるため、できるだけ控えるようにしてください。
4-4.歯医者選びのポイント
虫歯や歯周病を予防・早期治療するためにも、信頼のおける歯医者を見つけておくことをおすすめします。歯医者選びのポイントは以下のとおりです。
- 実績が豊富か
- 院内は清潔か
- 治療や費用についてきちんと説明してくれるか
- 受付の対応は丁寧であるか
- 予防歯科に力を入れているか
5.歯を失う原因や対策に関するよくある質問とお役立ち情報
「歯を失う原因や対策を知りたい」という人が感じる疑問とその回答、役立ち情報をまとめました。
Q.「日本人は歯の寿命が短い」といわれている理由は何ですか?
A.歯が失われる原因や予防歯科についての認識が低いためと考えられます。実際に、定期検診の受診率も海外に比べると低いのが現実です。
Q.歯が失われてしまったときの治療方法にはどのようなものがありますか?
A.主に入れ歯かブリッジ・インプラントといった治療法を選択することになるでしょう。
Q.歯周病になると口臭が強くなる理由を教えてください
A.歯周病菌が歯茎に炎症を起こす際、細胞や血液を分解するために臭いの原因となる物質を産生するためです。
Q.歯周病と歯槽膿漏(のうろう)はどう違うのでしょうか?
A.一昔前まで、歯周病は歯槽膿漏(のうろう)と呼ばれていました。歯槽膿漏(のうろう)は歯茎から膿(うみ)が出る症状のことをいい、現在は重度の歯周病のことを指して歯槽膿漏(のうろう)といいます。
Q.子どもも歯周病になるのでしょうか?
A.子どもが歯周病になることもあります。ほとんどの場合、みがき残しによるプラークの蓄積が原因です。子どもの歯周病は大人に比べて進行が早いため、注意が必要でしょう。
まとめ
いかがでしたか? 歯を失う原因や失わないための対策について詳しくご紹介しました。歯は思った以上に重要な役割を持っています。歯を失うことは全身にも影響する問題であり、日ごろから健康な歯を保つためのケアが必要です。ぜひこの記事を参考にして、歯を失わないために心がけるべきことを知ってください。