歯が抜ける原因というと真っ先に虫歯を思い浮かべる方が多いと思いますが、歯周病も進行すると歯が抜けてしまう病気です。歯周病は歯肉の炎症から始まる病気で、30代~50代の約8割が発症しているといわれています。そんな歯周病の予防効果が期待できるのが、歯茎と歯肉のマッサージです。
そこで今回は、歯茎や歯肉をマッサージする方法やその効果についてご紹介しましょう。
歯茎や歯肉のマッサージを定期的に行っていれば、小顔効果や肩こり解消効果も期待できます。歯茎や歯肉の健康が気になるという方は、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。
歯茎の役割と歯周病の怖さについて
歯茎と歯肉のマッサージ方法を紹介する前に、歯茎の役割と歯周病の怖さについてご説明します。歯の健康ももちろんですが、歯茎の健康も大切なのです。
1-1.歯茎の役割とは
歯茎は、歯を支える土台の役割を担っています。年を取ると歯が弱って硬い食べ物が食べられなくなるとよく言われていますが、これは歯そのものが弱っているからではありません。歯を支える歯茎が弱っているので硬い物がかめなくなるのです。
1-2.歯茎が弱るとはどういうこと?
私たちが食事をすると、口の中に食べかすが残ります。この食べかすはある程度は唾液によって洗い流されますが、取りきれなかった汚れが口の中に必ず残るのです。この汚れが堆積するとプラーク(歯垢)になります。プラークは口の中に住む細菌の繁殖場所になり、歯肉に炎症を起こす原因にもなるのです。歯茎が弱るということは、プラークによって歯肉が炎症を起こしていること。この状態が進むと歯周病を発症します。
1-3.歯周病セルフチェック
- 歯肉の色が赤黒くなっている
- 歯肉が腫れぼったくなり、歯と歯の間にある歯肉が膨れているように見える
- 歯磨きをすると歯肉から出血する
- 歯がぐらぐらしてきた
- 硬い物がかみにくくなってきた
- 起床直後は、口の中がねばねばして気持ち悪い
- 口臭の強さを指摘されることが増えた
このような項目に当てはまる方は、歯周病が進行している可能性があります。至急歯科医院を受診しましょう。
1-4.歯周病が進行するとどうなるのか
歯周病の初期は歯肉が腫れる程度で、痛みもそれほどありません。しかし、放置していると歯肉の奥まで菌が入りこみ、歯の根っこを溶かしてしまいます。こうなると、歯が抜けてしまうのです。現在、日本では虫歯よりも歯周病で歯を失う人の方が多いといわれています。
また、今は歯が抜けても人工の歯を歯茎に装着するインプラントという技術がありますが、歯周病で歯茎弱っていれば行えません。さらに、一本歯が抜けるとその周りの歯が抜けた部分に片寄ってきて、抜けやすくなってしまいます。
1-5.歯周病が進行しやすい生活習慣とは?
歯周病は30代以上の人で約8割が発症しているといわれています。しかし、症状の進み方には個人差があり、生涯軽い歯肉の炎症で済む方もいれば、早い年代で歯が抜けるまで症状が進行する方もいるのです。進行の進み具合は、歯磨きの仕方もさることながら歯茎の血行も関係してきます。
たとえば、喫煙をしていると歯周病が進行しやすいのですが、これはタバコの成分が血管を収縮させて歯茎の血流が滞るからです。この他、口呼吸をしていると口の中の唾液が減ってドライマウスと呼ばれる症状になります。こうなると口の中により細菌がたまりやすくなり、歯周病が進行しやすくなるのです。
- 喫煙をしている
- 歯磨きはいつも1分以内である
- 夜、歯を磨かずに寝てしまうことが多い
- 口呼吸である
- 常に強いストレスを感じている
このような生活習慣がある方は、歯周病が重症化しやすいでしょう。
1-6.歯と健康の関係
歯を失うと、硬いものがかめなくなります。今は入れ歯の技術も発達してきましたが、それでも自分の歯と全く同じというわけにはいきません。不具合が起こることもありますし、食べ物の味がしなくなったと訴える方もいます。また、高齢になっても自分の歯がたくさん残っている人ほど健康で、要介護状態になりにくいのです。ですから、内臓や脳と同じように歯の健康にも気を配る必要があります。
歯茎マッサージの効果とは
この項では、歯茎マッサージの効果についてご紹介します。歯茎や歯肉をマッサージするとどのような効果があるのでしょうか?
2-1.歯茎マッサージとは
歯茎マッサージとは、歯茎・歯肉・口腔内の粘膜をマッサージすることです。マッサージには血行促進の効果があります。歯茎をマッサージすることにより歯肉と歯茎の血流を良くすれば、歯周病の予防に効果が期待できるのです。
また、口腔内には約40のツボがあり、これを刺激することでリンパの流れがよくなり、肩こりやむくみ解消効果が期待できます。ピンポイントでツボを押さなくても歯茎全体をマッサージすればよいので、特別な技術は必要ありません。
2-2.歯茎マッサージと美容効果
歯は、口の周りの皮膚のハリと密接な関係があります。歯が弱って抜けてしまうと一気に老けて見えるのは、口の周りの皮膚がたるんでしわが増えるからです。また、口の周りには筋肉があり、これをマッサージによって引き締めると小顔効果やほうれい線の解消にも効果が期待できます。
2-3.こんな人は歯茎マッサージをしてみよう
- 顔がむくむことが多い
- 歯茎の色があまりよくない
- 喫煙者
- ほうれい線が目立ってきた
- 口の周りの筋肉がたるんできた
- ストレスがたまっている自覚がある
歯茎マッサージのやり方
この項では、歯茎マッサージのやり方や注意点をご紹介します。ぜひ参考にしてください。
3-1.歯茎マッサージの頻度や行う前の準備
歯茎マッサージは、「やればやるほどよい」というわけではありません。1日1回、多くても2回、5分程度までにしておきましょう。行う前に歯をきれいにしておく必要があるので、夜寝る前の歯磨き後に行うのが効果的です。
歯をきれいに磨いたら、手を石けんできれいに洗いましょう。爪を立てると歯茎を傷つけてしまいますので、爪を短くしておくことも大切です。スカルプネイルを装着している方は、必ず外してください。
3-2.歯茎マッサージのやり方
3-2-1.歯茎
歯茎と歯の境目を指の腹で小刻みにマッサージをしてください。歯を磨く要領です。力を入れずに優しくなでるように行いましょう。一通りマッサージが終わったら、奥歯部分から手前に指を滑らすようにマッサージをします。その後、歯茎を奥から前に向けて指をくるくると回しながらマッサージをしていきましょう。
3-2-2.口の内側
口の内側の皮膚を、手前に向けて引っ張ります。この時、力をかけすぎないのがコツです。ほうれい線を伸ばすような気持で行えば、筋肉の運動にもなって小顔効果も期待できます。
3-3.マッサージの道具について
マッサージの基本は何もつけずに指で行います。しかし、指に傷があったり指で直接歯茎に触りたくなかったりする場合は、歯茎マッサージャーという道具や指歯ブラシを使うとよいでしょう。どちらもドラッグストアで販売されています。また、専用のジェルも販売されているので、それを使ってもいいですね。
3-4.注意点
歯茎や口の中の皮膚はとてもデリケートです。ですから、力任せにこすってはいけません。また、塩をつけてマッサージをすると塩の粒子が歯茎を傷つけます。痛みを感じたり血が出てきたら即座に中止してください。
歯科医院で行える歯茎ケア
この項では、歯科医院で行える歯茎ケアについてご紹介します。歯科医院が大好きという方はいませんが、歯の健康のためには定期的に口腔内をチェックしてもらうことが大切です。
4-1.歯科医院では歯茎の相談も行える
歯科医院というと虫歯を治療する場所というイメージがありますが、歯茎や歯肉のトラブルも歯科医院で治療を行います。もちろん、歯周病の治療も行えますので、歯茎が腫れたり歯がぐらついたりしている場合は、早めに歯科医院を受診しましょう。歯周病は一度発症すると完治することはありません。ですから、こまめ口腔内のケアで進行を食い止める必要があります。
また、歯周病の元となる歯垢や、歯垢が固まった歯石の除去も行えますので、定期的に行ってもらうと歯周病の予防や重症化を防ぐことができるのです。
4-2.歯科医院で行う歯茎マッサージ
歯科医院によっては、歯科衛生士が歯茎マッサージを行ってくれます。専用ジェルを使って入念に行ってくれますので、できればプロにマッサージをしてもらいたいという方におすすめです。「デンタルエステ」という名目で行っている歯科医院もあります。
4-3.歯科医院で行える口腔ケア
歯科医院で行える口腔ケアは、前述した歯石の除去です。どんなに入念に歯磨きを行っていても歯垢はたまっていき、歯石ができます。ですから、数か月~半年に1度は歯科医院に通い、歯石を除去してもらいましょう。定期的に歯科医院を受診していれば、初期の歯周病にもすぐに気づいてもらえます。
4-4.歯科医院の選び方
歯科医院には、一般の歯科・口腔外科も行っている歯科・矯正を行う歯科・審美歯科などの種類があります。審美歯科とは、歯の見た目を調える歯科医院のことで、歯のホワイトニングやインプラント・成人向けの歯科矯正などを中心に行っているのです。歯茎のトラブルについて相談したい場合は、歯周病の治療実績がある歯科医院を受診しましょう。
なお、歯科医院は定期的に通う必要があります。ですから、通いやすい歯科医院を探すことも大切です。今はホームページを開設している医院も多いですので、それを参考にしてもいいでしょう。
歯茎マッサージに関するよくある質問
Q.歯茎マッサージをすると、出血や痛みがでます。どうしたらいいでしょうか?
A.力任せにこすってはいませんか? 歯茎のマッサージは、優しくなでるよう行ってください。これで痛みが生じる場合は、歯周病が進行している可能性があります。歯科医院で治療を受けましょう。
Q.歯茎マッサージで歯周病は改善しますか?
A.マッサージをしただけでは歯周病は改善しません。歯周病を改善するには、歯科医院で治療を受ける必要があります。
Q.歯茎をもむようにしていると、ぶよぶよとした感触がありますがなぜですか?
A.歯周病が進行している可能性があります。早めに歯科医院を受診しましょう。
Q.子どもに歯茎マッサージをしても大丈夫ですか?
A.はい。大丈夫ですが、大人に行うよりもそっと行ってください。また、ぐらぐらしている歯がある場合はやめておきましょう。
Q.歯周病の治療は痛いですか?
A.虫歯と同じで、初期のうちに治療をするほど痛くありません。重症化している場合は麻酔をかけた状態で歯石を取りますが、場合によっては痛みを感じることもあります。
おわりに
いかがでしたか?今回は歯茎や歯肉のマッサージについてご紹介しました。歯茎や歯肉の血行促進だけでなく、リフレッシュやリラックス効果も期待できますので、1日1回行ってみてください。なお、手の清潔にだけは十分に気を配りましょう。手に傷がある場合はマッサージを休むか、指歯ブラシで保護して行ってください。