気になる口臭は『舌苔(ぜったい)』と呼ばれる舌の汚れが原因の一つです。最近はテレビでも取り上げられることが多いので、ご存じの方も多いことでしょう。できれば、舌苔(ぜったい)を除去して、口臭対策をしたいものですよね。
しかし、舌苔(ぜったい)は間違った方法で掃除すると、なかなかうまく取ることができません。どうやって舌磨きをすればいいのだろうか、と困っている方も多いことでしょう。
そこで、今回は舌苔(ぜったい)と口臭、そして正しい舌磨きの方法などについて中心にご紹介します。
これらの記事を読むことで舌苔(ぜったい)にまつわる基礎知識を学ぶことができます。舌苔(ぜったい)を取るための舌磨きについてもご紹介しているので、ぜひ最後までおつきあいくださいね。
1.舌磨きの基礎知識
1-1.舌は汚れやすい
分かりやすい例でいえば、コーヒーやメロンソーダなどの色の強い飲み物を飲んだ後に舌を見たら、茶色や緑色に染まっていたという経験があるはずです。また、チョコレートを食べた後、舌に味が残っていて甘ったるくて不快に思ったことなどもあると思います。
そう、実は非常に汚れやすい部位なのです。歯だけではなく、舌の汚れにも気をつけてあげましょう。
1-2.舌苔(ぜったい)について
何も食べていないのに、舌を出して鏡で見ると、表面がうっすらと白くなっていることが分かると思います。この白いものが舌苔(ぜったい)です。
舌苔(ぜったい)はいわば舌の汚れで、食べかすはもとより、口の中ではがれ落ちた細胞や白血球などによって構成されています。歯の汚れ、いわゆる歯垢(しこう)と同じように細菌の温床です。
1-3.舌苔(ぜったい)で汚れるとどうなるか
舌苔(ぜったい)で舌が汚れて細菌が増殖すると嫌なにおいを発するようになります。つまり、口臭が発生するわけです。
また、舌苔(ぜったい)は外から入ってきた細菌が付着しやすい部位でもあります。そのため、これからの時期に怖いインフルエンザウィルスなどが付着し、インフルエンザを発症させる原因となることもあるでしょう。
では、舌苔(ぜったい)は完全に除去してしまえばいいのか、というとそうでもないのが難しいところ。実は、舌苔(ぜったい)を取り過ぎると『逆効果』になってしまうのです。
舌苔(ぜったい)は唾液を保持する役目があるので、取り過ぎると舌が乾燥しやすくなります。ずっと口を閉じている人は良いとしても、口呼吸の人やおしゃべりな人、運動するような方は舌が乾燥してしまうでしょう。唾液は抗菌作用を持っているので、舌から唾液がなくなると抗菌作用が弱まり、口臭が強くなってしまうのです。当然、歯周病や虫歯などのリスクも高まるでしょう。これから秋冬と乾燥の季節ですから、特に注意が必要です。
また、舌苔(ぜったい)を取り過ぎると体の防衛本能が働き、より舌苔(ぜったい)がつきやすい体質になることがあります。舌苔(ぜったい)がつきやすくなるということは、それだけお口のトラブルに悩みやすくなるということです。
舌苔(ぜったい)がキレイに取れないからといって、やり過ぎるのはやめましょう。
1-4.舌磨きは良いのか、悪いのか?
もちろん、舌磨きはとてもいいことです。舌磨きをすることで口臭を改善できることはもとより、これからの時期に備えたいインフルエンザなどの予防にもつながります。
ただし、すでにお話ししたとおり、舌苔(ぜったい)を取り過ぎると逆効果になるので注意しなければいけません。
また、多くの人が間違った舌磨きをしています。間違った舌磨きをすると、これもまた逆効果です。逆に口臭を強くしてしまったり、病気になりやすくなったり、はたまた『味覚障害』になってしてしまうこともあります。
舌磨き自体はぜひ取り入れるべき習慣といえますが、正しい知識を持って行うことが大切です。ぜひ今回の記事を最後まで読んで、正しい舌磨きのテクニックを習得してくださいね!
2.舌苔(ぜったい)による健康セルフチェック
実は、舌苔(ぜったい)は舌の汚れというだけではなく、健康のバロメーターでもあります。舌苔(ぜったい)の状態を見ることで、健康状態を計ることができるのです。もちろん、口臭などの状態も分かりますよ。
2-1.薄白苔の場合
舌全体の色が淡い赤色で、舌苔(ぜったい)は舌の色が透けて見えるくらいの白く薄い状態のことを指します。理想的な状態の舌です。健康的にも問題なく、口臭もほとんどありません。
2-2.厚白苔の場合
白く厚い苔が舌全体に広がっている状態を指します。自律神経のバランスが崩れていたり、風邪などの感染症にかかっていたりするときになりやすい状態です。冷暖房の温度に気をつけたり、規則的な生活をしたりすることで自然と改善されます。
口臭は強めに出るでしょう。
2-3.裂紋舌(れつもんぜつ)の場合
あまり舌苔(ぜったい)は付着しておらず、舌の表面がひび割れたように線が走っている状態です。一見、舌苔(ぜったい)がないので健康に思えますが、実はその逆。
裂紋舌(れつもんぜつ)は体内に水分が少ないことを表しています。水分が少ないので血がドロドロになって血流が悪くなるでしょう。また、胃潰瘍(いかいよう)などの内臓疾患を起こすリスクが高まります。
また、水分が少ないので舌も乾燥気味です。口臭が強くなる傾向にあるでしょう。しっかりと水分を補給して、改善させてくださいね。
2-4.黄苔の場合
消化器官に異常があると起こりやすい舌苔(ぜったい)です。慢性胃炎や脂肪肝、アレルギー性疾患などが発生している場合によく見られます。
唾液がねばねばとし、強い口臭が発生するでしょう。
2-5.滑苔(かったい)の場合
透明な粘液状の舌苔(ぜったい)です。体内に水分が多いことでなります。口の中も水分が多いので、口臭などはほとんどありません。しかし、良い状態というわけではないので注意が必要となります。
アレルギー性鼻炎やぜんそくなどの患者さんによく見られる舌の状態です。
2-6.舌苔剝離(ぜったいはくり)の場合
舌苔(ぜったい)が所々はがれてしまっている状態です。見た目が地図のように見えることから、地図舌と呼ばれることもあります。
栄養バランスが崩れている証拠で、特にビタミンが足りていない人に起こりやすいでしょう。長い間治らない場合、健康に大きな影響が発生している可能性があります。専門家に相談しましょう。
2-7.木苺舌(きいちごぜつ)の場合
舌の色が赤く、白い舌苔(ぜったい)が木苺(きいちご)のように斑点状に広がっている状態を指します。
女性に多い舌の状態で、精神的な疾患に多く見られる状態です。自律神経失調症や更年期障害、不安神経症、不眠症などの可能性があるでしょう。
3.舌磨きの効果と正しい方法について
3-1.効果について
舌磨きは正しい方法で行えばさまざまなメリットがあります。
一番はやはり口臭の予防です。舌苔(ぜったい)は口臭の原因の一つですから、舌苔(ぜったい)を適切に除去することで口臭を減らすことができます。
また、舌苔(ぜったい)にはさまざまな細菌も潜んでいるので、風邪などの予防にもなるでしょう。
ほかにも、見た目をよくするという点も上げられます。舌を見せることはあまりないとは思いますが、いざというときの対策となるでしょう。
3-2.間違ったやり方に注意
舌苔(ぜったい)の取り方は多くの方が間違っています。以下に挙げるような方法で舌苔(ぜったい)を取っている方は間違った方法なのでやめましょう。
- 歯磨き粉をつけた歯ブラシでゴシゴシとこする
- 爪でひっかいて取る
- 前歯でこすり取る
このような方法で舌苔(ぜったい)を取ると、舌の表面が傷ついてしまいます。傷がつくと、場合によっては化膿(かのう)し、口臭が強くなるのです。また、舌の表面にある『味らい(味を感じる部分)』が傷つくことによって、味覚障害を引き起こしてしまうリスクもあります。
3-3.正しい方法
舌磨きを行う前には、まず歯磨きをしましょう。歯磨きをせずに舌磨きだけをしても、歯などに付着している汚れが舌についてしまっては意味がないからです。
舌磨きをする際には『舌磨きブラシ』『歯ブラシ』『綿棒』のどれかを使って除去をしましょう。どれを使った場合でも、やり方は同じです。
- 鏡で舌苔(ぜったい)がどこについているのかを確認します。
- 歯磨き粉などをつけていない状態のブラシや綿棒を、舌のつけ根に当てましょう。
- ゆっくりと優しく手前へ引き寄せてください。
- ブラシを水で洗いましょう。
- 作業の『1』に戻ります
上記の工程は何度か繰り返すことで除去が可能です。ちなみに、磨くときの力加減は『100グラムの力』が良いとされています。100グラムというと、束売りされているパスタの1束分。もしくは、iPhoneなどのスマートフォン(カバーがない状態)よりも少し軽いぐらいの重さです。平たくいってしまえば、ほとんど力を込めていない状態となります。
ちなみに、行うタイミングと回数については、朝の歯磨き後に1回するだけで十分でしょう。多くても朝と晩の2回にしてください。何度も何度もやってしまいがちですが、2回以上はやり過ぎになってしまって逆効果です。1日1回~2回という回数は絶対に守るようにしましょう。
4.舌磨きと歯科について
4-1.プロフェッショナルの口腔(こうくう)ケア
プロの行う口腔(こうくう)ケアは、トータルケアです。舌磨きだけ、歯磨きだけではなく、すべてをしっかりと行います。なぜなら、舌磨きができていても歯磨きが不十分であれば、汚れが舌につくので無意味だからです。もちろんその逆もあり得ます。舌磨きを行うのであれば、しっかりと歯磨きも丁寧に行うことが大切ですよ。
4-2.定期健診について
自分一人で口腔(こうくう)ケアを行うのには限界があります。普通の歯ブラシではどれだけがんばって磨いても歯の汚れのすべては取れません。舌苔(ぜったい)に関しても取り過ぎてしまったり、逆に取れなかったりするでしょう
歯科医院ではPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)などを代表する、専用器具を用いたクリーニングがあります。たとえばPMTCを定期的に行っていれば、口臭や虫歯、歯周病のリスクを限りなく下げることができるでしょう。
ですから、定期的に歯科医師の診察を受けるのが大切です。できれば、1か月に1度は定期健診を受けるべきでしょう。他人に迷惑をかけないために、そして自分自身のためにも、ぜひ検討してみてくださいね。
4-3.歯医者選びのコツ、ポイント
歯医者選びにおいて一番重要なポイントは、『説明』をしっかりとしてくれる医者かどうかです。「どうせ分からないだろう」と説明をおざなりにするような歯医者はハズレといえます。患者さんのことを一番に考えていない証拠だからです。
歯医者も含め、治療を行う人間は患者さんのことを第1に考えていることが求められます。そうしないと、時として大きな間違いを起こすことがあるからです。患者さんのことを第1に考えている人なら、いつでもしっかりと考えて治療をします。適当なことをしないので、間違いが起こることも少なくなるというわけですね。
ですので、どんな質問にもしっかりと答えてくれる歯医者を選びましょう。あるいは、質問しやすい環境を整えている歯医者を選んでくださいね。
また、予防歯科に対して積極的に取り組んでいるかどうかも重要なポイントです。歯科医院において予防歯科は究極のテーマといえます。なぜなら、予防歯科がしっかりとできていれば、理論上は虫歯や歯周病などにはならないからです。
歯科医院のHPなどを確認し、PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)などの予防歯科に力を入れているかどうかを確認しましょう。
5.舌苔(ぜったい)と口臭のよくある質問
5-1.舌苔(ぜったい)を取れば必ず口臭はなくなりますか?
舌苔(ぜったい)は口臭の原因の一つですが、原因のすべてではありません。歯周病や歯垢(しこう)、あるいは扁桃腺(へんとうせん)付近にできる膿栓(のうせん)なども原因の一つです。これらが複雑に重なって、口臭というものは発生しています。ですから、舌苔(ぜったい)を取ったからといって必ず口臭がなくなるというわけではありません。
ちなみに、口臭の一番の原因は歯周病です。つまり、口臭対策としては歯のケアが一番大切ということになりますね。
5-2.舌磨きのタイミングは歯磨きの前と後どっちが正解なのですか?
いろいろなサイトで、舌磨きのタイミングが書かれています。しかし、あるサイトでは「歯磨きの前にやると逆効果」と書かれており、かと思えば「歯磨きの後にやると逆効果」と書いてあるサイトもあって混乱している方も多いでしょう。
このような矛盾が起きてしまうのは、すべて歯磨き粉が原因です。
舌磨きにおいて絶対に避けなければいけないのは歯磨き粉を使った舌磨き。研磨剤などの成分によって舌の表面が傷つき、むしろ舌苔(ぜったい)がつきやすくなってしまうためです。
歯磨きをした後は口の中に歯磨き粉の成分が舌に付着しています。ですから、『歯磨き後の舌磨きは駄目』だとなるわけです。しかしながら、口の中が汚れた状態で舌磨きをするのもまた良くないので、『歯磨き前の舌磨きは駄目だ』となります。
つまり、1番いいのは『歯磨きをした後に十分口をゆすいでから舌磨きをする』ことです。最低でも10回ぐらいは口をゆすいで、完全に歯磨き粉の味がしなくなってから、舌磨きを行いましょう。
5-3.口臭は歯科医院の治療で治るのですか?
治ります。口臭の原因である歯周病は治療が可能ですし、舌苔(ぜったい)は掃除の仕方を指導してくれるでしょう。また、膿栓(のうせん)に関しても、歯科医院によってやらない場合もありますが除去ができます。
しっかりと治療をし、指導に従ったオーラルケアをすれば必ず口臭は改善されるでしょう。
5-4.口臭を抑える飲食物はありますか?
口臭は基本的に菌の増殖によって発生します。ですから、殺菌作用のある食べ物を食べることで口臭を和らげることが可能です。
たとえばレモンや梅干しなどの酸っぱい食べ物。酸っぱい食べ物に含まれるクエン酸には強い殺菌効果があるので、口臭を和らげてくれるでしょう。また、酸っぱい食べ物は唾液を分泌させる効果があります。唾液がいっぱい出ると口内環境が良くなるので、この意味でも酸っぱい食べ物はおすすめです。
また、緑茶やウーロン茶などもおすすめします。緑茶やウーロン茶に含まれるカテキンに殺菌や消臭効果があるからです。普段飲むものを緑茶やウーロン茶に変えただけで口臭がぐっと減りますよ。
また、もちろんのことですがキシリトールガムも効果的です。できるだけキシリトールの含有量が多いガムを選びましょう。できればキシリトール100%が理想です。
5-5.口臭の強い時間帯はいつですか?
口臭は食後が最も低いとされており、そこから時間がたつほどに強くなります。また、空腹時にも口臭が強くなるでしょう。
つまり、1日の内で食事を取ってから最も時間があき、かつ空腹である寝起きが1番口臭の強い時間帯です。
まとめ
いかがでしたか?
今回は舌苔(ぜったい)と舌磨きにまつわる情報を中心にご紹介しました。
舌磨きは口臭予防にとても役立ちます。しかしながら、やり方を間違えてしまうと逆効果になってしまうリスクがあるのを覚えておきましょう。
口臭はトータルケアが大切です。舌磨きだけにこだわらず、歯磨きや歯周病予防などにもしっかりと目を向けましょう。