食いしばりの原因・改善・治療5つのポイント

食いしばりを治療したい人必見! 原因・改善・治療5つのポイント

食いしばりのお悩みを抱えていませんか?仕事中やテレビを見ているとき、ゲームをしているときなどに思わず夢中になって「歯を食いしばってしまう」という人は多いものです。また、眠っている間の食いしばりが強いために、朝起きると歯ぐきや顎(あご)が痛いなどの症状を感じている人もいます。食いしばりは、放置すると歯や口くう内以外にも悪影響を及ぼすのです。

そこで、ここでは食いしばりの基礎知識や原因・改善や治療方法などをご紹介しましょう。

この記事を読むことで、自分の食いしばりの状態を把握(はあく)できます。また、どのように改善すればいいのかもわかるでしょう。ぜひ、お役立てください。

食いしばりの基礎知識

食いしばりの改善・治療をするために、「そもそも食いしばりとは?」という基礎知識を学びましょう。

1-1.食いしばりとは

「自分でも無意識のうちに、ぐっと強く歯を食いしばるクセがある」という人は少なくありません。このような「食いしばり」は、めずらしいことではなく誰でも行っています。けれども、パソコン仕事をしているとき・テレビを見ているとき・ゲーム中など、始終歯を食いしばるのがクセになっている人は要注意です。

食いしばりは、英語では「クレンチング症候群(Clenching syndrome)」といい、放置すると体のいろいろな部分に支障をきたします。自分で「食いしばり」しているかも……と感じたら、今以上に症状が進まないように改善したり専門医の診察を受けたりなどの対策を取りましょう。

1-2.食いしばりの主な原因

食いしばりには物理的な原因と精神的な原因があるといわれています。

1-2-1.物理的な原因

  • 虫歯で痛みがある
  • 歯の高さが合っていない
  • 仮歯や差し歯などが合っていない
  • 抜きっぱなしの歯があり歯の高さが狂っている
  • 肉体的なストレス(過労・栄養不足・睡眠不足・病気やけがなどで体に痛みがある)
  • 枕の高さがあっていない

1-2-2.精神的な原因

  • 熱中しやすい性格(映画やゲーム・スポーツ・SNSなどに夢中になりやすい)
  • 緊張や不安、心配ごとを抱えている
  • 仕事や人間関係などのストレスがある

1-3.食いしばりになりやすい人とは

「1-2.食いしばりの主な原因」でご紹介したように、歯やかみ合わせなどに問題がある人、肉体的・精神的にストレスを抱えている人は食いしばりになりやすいのです。

1-4.子どもの食いしばりについて

食いしばりは、小さい子どもに多いのはご存じですか? 3歳児では、90%の子どもが食いしばりの症状があるといわれています。さらに、4歳を過ぎると子どもの顎(あご)は成長しますが乳歯はそのままなので歯と歯の間にすき間ができ食いしばりの症状が進むともいわれているのです。また、永久歯が生え始めると、乳歯と永久歯が混ざり、かみ合わせがずれるようになります。そのために、歯ぎしりや食いしばりをすることも多いのです。

そして、ストレスも食いしばりの原因といわれています。「子どもにはストレスがない」と考える人もいますが、実は小さい子どももストレスを抱えることがあるのです。

  • 引っ越しなどで環境が変わった
  • 保育園や幼稚園などに入園した
  • 友達とうまく遊べない
  • 両親が不仲、家庭内がごたついている
  • 下に子どもが生まれた

などで、心にストレスをため込むこともあるのです。

食いしばりが原因でおこる症状について

食いしばりは放置すると、歯や口くう内だけではなく体のいたるところにさまざまな症状を引き起こします。

2-1.歯・口くう内への影響いろいろ

  • 歯が削られる

  • 歯が欠けたり折れたりする

  • 歯がしみる

  • 食事時にかむと痛みがある

  • 差し歯や詰め物が折れたり取れたりする

  • 歯ぐきが腫れる

  • 歯周病や歯肉炎を引き起こす

2-2.頭痛・耳鳴り

昼夜問わず食いしばりをしていると、歯だけではなく顎(あご)や顔、こめかみの筋肉にも力が入っている状態が続くので負担がかかります。そのために、頭痛を感じることもあるのです。また、頭痛だけではなく常に耳鳴りや耳がふさがっているような感じがすることもあります。

2-3.肩こり

強く食いしばっている状態は、首や肩周辺の筋肉にも負担をかけます。日常的に食いしばりがクセになっているために、常に肩こりや首こりに悩まされている人は少なくありません。

2-4.食いしばりを放置するとどうなるか

食いしばりを放置すると、歯に影響が出るだけではなく、かみ合わせが悪くなるので虫歯や歯周病を引き起こします。また、食いしばりにより顎(あご)の筋肉が常に緊張している状態だと、顎関節症(がくかんせつしょう)を引き起こすこともあるので要注意です。

さらに、顔・首・肩の筋肉が常に緊張していると、血管を圧迫するので老廃物や血液を流す力が弱まります。そのため、顔全体がむくんだり顔色が悪くなったりほうれい線ができやすくなったりするのです。睡眠中に強い食いしばりがある人は、きちんと熟睡できないので睡眠障害や自律神経失調症も引き起こします。

食いしばりセルフチェック

食いしばりが気になる人は、セルフチェックをしてみましょう。

3-1.気づかぬうちにしている場合も

食いしばりは、ほとんどの人が無自覚で行っています。仕事や作業中に食いしばりをしている場合、自分で気が付く人なら直すことができるでしょう。けれども、自分が食いしばりをしていることに無自覚なままの人もいます。また、眠っている間の食いしばりは自分で直すことはできません。「2.食いしばりが原因でおこる症状について」でご紹介したような症状に心あたりがある人は、セルフチェックをしてみましょう。

3-2.食いしばりのセルフチェック項目

以下の項目をチェックしてください。

  • 唇を閉じると上下の歯が当たる
  • 慢性的な首こり・肩こりに悩んでいる
  • 朝、起きると顎(あご)やほお、こめかみなどに痛みやだるさを感じる
  • 寝ている間に舌やほおをかんでいる
  • 顔や口の周りがだるい
  • 耳鳴りや耳がふさがっているような感覚がある
  • ほうれい線が目立つ
  • 歯がすり減っている感じがする
  • 知覚過敏がある
  • 耳の裏のくぼみやエラの部分を押すと痛みがある
  • 舌のふちに歯でかんだ跡がある

1〜2つ心あたりがあれば、自覚がないままに食いしばりをしている可能性があります。

食いしばりの改善法

食いしばりは、意識的に改善することが大切です。自分でできる方法をご紹介しましょう。

4-1.マウスピースなどのグッズについて

食いしばりによる、歯や歯ぐきのダメージを防ぐグッズにマウスピースがあります。そのまま口に入れ奥歯を固定するものや、熱湯で柔らかくしてかむことで自分の歯並びに合うように調節できるものもあるのです。ただし、市販の製品は長期間使用するのはおすすめできません。使い続けると歯並びやかみ合わせが狂ってしまうこともあるのです。きちんと自分の歯に合ったマウスピースは、歯科医師で診察を受けてから作ってもらいましょう。健康保険3割負担の人なら5,000円程度で自分の歯型にぴったり合ったマウスピースを作れます。

4-2.意識改善

自分が食いしばりをしないように、常に意識をすることも大切です。パソコン・テレビ・冷蔵庫・トイレ・洗面所の鏡・枕元などに「食いしばり注意!」などと書いた付箋(ふせん)紙を貼るのもおすすめです。スマートフォンのアラームを1時間ごとに鳴らし「食いしばりしていない?」と、自分で自分に知らせるのもいいでしょう。自分で「食いしばりをしないようにしよう」と意識するだけでも軽減することができます。

4-3.寝る姿勢を直す

難しいとは思いますが、横向きに寝るクセのある人は片側の顎(あご)やこめかみにかたよった力がかかるのでやめましょう。できるだけ、あお向けで寝るようにしてください。また、枕が高いと顎(あご)が下がるので食いしばりをしやすい状態になってしまいます。低めの枕に替えましょう。また、低反発の枕は寝返りをしやすいので、食いしばるクセのある人には向いていません。食いしばりの人に向いているのは「タオル枕」です

  1. バスタオルを縦(たて)に2つに折る
  2. タオルの片側からくるくる巻く
  3. 頭の下に入れて首や肩に力が入らないリラックスできる高さに調節する

タオル枕は首や肩の緊張がやわらぐので食いしばり予防になります。

4-4.ほおづえ

仕事中、無意識に「ほおづえ」を付いていませんか?ほおづえは片側だけの顎関節(がくかんせつ)に負担がかかり、かみ合わせが悪くなります。食いしばりが悪化してしまうのでやめるように心がけてください。

4-5.ストレッチなど

仕事の合間や寝る前などに「筋肉脱力ストレッチ」を行いましょう。両手を上に伸ばし思いきり力を入れてから一気に肩の力を抜いて脱力してください。何度か繰り返しましょう。首・肩・腕のこりをほぐすこともできます。

4-6.口と顎(あご)周辺の筋肉ケア

  1. ほおのエラ部分で押すと気持ちいい場所があれば両手で抑えてクルクルと回しマッサージをしましょう。
  2. 口の中に親指を入れ、ほおの外側から人差し指で押えます。(親指と人差し指でつかむように)そのまま、ぐるぐる大きく回します。
  3. ほお・上唇・下唇に空気を入れます。(プ〜ッとふくらむように意識してください)

4-7.舌を置く場所を意識する

昼間、無意識に食いしばりをしてしまう人は「舌の先」を置く場所を意識しましょう。

  • 舌の先端を上の前歯の裏側にある突起に当てる
  • 舌の先端で上の前歯の裏側と歯ぐきの境をなめる

自分が「食いしばってるな」と気が付いたときに、試みてください。

4-8.注意点

食いしばりは、1〜7の方法で改善が可能です。けれども、もし仕事や人間関係などでストレスを抱えている状態だと難しいこともあります。食いしばりは精神的なストレスと大きく関係しているので、自分に合ったストレス解消方法を見付けることも大切なのです。ただし、深夜まで飲んだりカラオケで騒いだりするのは疲労がたまるので食いしばりの改善はできません。

  • アロマオイルのお風呂にゆっくり入る
  • リラックスできる音楽を聴いたり映像を見たりする
  • リラックスヨガをする

など、心も体も休めることができる方法を取り入れましょう。

食いしばりの治療法

食いしばりの治療は歯科で行っています。食いしばりの自覚がある人や心配な人は歯や口くう内のチェックも兼ねて診察を受けてみましょう。

5-1.歯科での治療法

歯科では、患者さんの歯や口くう内全体を診察し虫歯や歯周病の有無やかみ合わせなどチェックします。必要に応じてレントゲンを撮ることもあるでしょう。それから、かみ合わせの治療やマウスピースの作成などを行います。

また、筋肉治療を行っている歯科ではボツリヌス菌注射で筋肉の緊張をほぐす治療も行っているのです。歯科衛生士による「口くう周辺筋マッサージ」を行う歯科もあります。

5-2.かみ合わせの調整

歯科によって方法は異なります。一般的には、レントゲン・診察・ブラックスチェッカー(かみ合わせを検査するマウスピースのようなもの)などを用いてかみ合わせのチェックをするのです。その後、歯の高さを合わせる・差し歯などの作り直し・歯の矯正・マウスピースなど、その人に合った方法で治療計画を立てて調整します。

5-3.受診するタイミング

「2-2.セルフチェック項目」で当てはまるものはありましたか?5個以上当てはまるという人は、食いしばりの治療を行っている歯科で診察を受けましょう。セルフチェックに当てはまる項目が1〜2個しかなくても、食いしばりの可能性はあります。何年も歯科に行ってない人は、口くう内のチェックがてら受診してみてはいかがでしょうか。

5-4.メリット、効果について

歯科で受診するメリットは、食いしばりだけではなく虫歯の有無・差し歯や詰め物などの状態・歯周病チェック・かみ合わせなど総合的に診察してもらえることです。問題があった場合は治療計画を立てそれに基づいて根本的に歯や口くう内を治すことができるのがメリットでしょう。

また、「4-1.マウスピースなどのグッズについて」でご紹介したように、基本的に市販のマウスピースではぴったり自分の歯型に合わせることはできません。歯科なら、きちんとした歯並びに合ったマウスピースを作ってくれるので安心です。

5-5.費用について

食いしばりの治療は皆同じではありません。その人の歯や口くう内の状態によって治療内容も治療費用も異なります。費用は、治療計画を説明してもらうときに医師に確認してください。

5-6.歯科選びのポイント

現在では、歯科は「コンビニエンスストアの数よりも多い」といわれています。いざ、歯科に行こうと思っても、何を基準に選んでいいのか迷ってしまうものです。そこで、歯科選びのポイントをご紹介しましょう。

  • 歯科医としてのキャリアがある(クリニックのホームページで経歴や専門などをきちんと紹介している)
  • 新しい治療方法や器具を取り入れている(クリニックのホームページで治療内容や使用している器具を写真付きで紹介している)
  • 予約や問い合わせの電話をしたときの対応がいい
  • 「予防歯科」にも力を入れている
  • 病院内に清潔感がある
  • 完全予約制で診察や治療にたっぷりと時間を取ってくれる
  • 治療計画や費用などの説明を最初にきちんとしてくれる
  • 治療予算の相談に乗ってくれる
  • 虫歯や詰め物が取れた場所だけではなく口くう内全体を診察してくれる
  • できるだけ削らない、歯や神経は抜かないなどを心がけている

食いしばりや歯ぎしりなどの治療を専門としている歯科もあるので、自分の症状に合った病院を探してください。

5-7.注意点

歯科によって、保険診療・自由診療・混合診療(両方扱っているところ)があり、それによって治療内容や費用も異なるのです。保険診療は基本的に患者さんの負担が少なくて済みますが治療内容や時間に限界があります。自由診療は、高度で最新の治療を受けることができますが治療代は高くなるのです。混合診療は、患者さんの予算に応じて治療を選ぶことができます。事前に、歯科のホームページで確認してください。

食いしばりの治療〜よくある質問〜

食いしばりの治療にかんしてよくある質問をご紹介しましょう。

6-1.子どもの食いしばりについて

Q.子どもが食事のときに「歯が痛い」というようになりました。口くう内を観察しても虫歯はないようなのですが食いしばりでしょうか。

A.小さなお子さんは食いしばりが多いものです。成長と共になくなることもあります。しかしながら、痛みがあるようなら1度歯科の診察を受けたほうがいいでしょう。

6-2.マウスピースについて

Q.食いしばりの軽減にマウスピースがいいと聞きました。市販の安いものがあるのでそれでもいいですか?

A.市販のマウスピースは安いのですが、自分の歯型にぴったり合うわけではないのでストレスを感じることがあります。また、自分の歯に合わせて作るタイプでも、次第に合わなくなるため何度か購入することになるのです。そうなると、1個1,000〜2,000円のものでも出費がかさみます。歯科なら健康保険が適応でき、5,000円程度で自分の歯並びにぴったりのマウスピースを作れるので結果的にお得です。

6-3.ボツリヌス菌注射について

Q.食いしばりの治療で行うボツリヌス菌注射はどのような効果があるのでしょうか。

A.ボツリヌス菌注射は美容外科でシワ予防などにも用います。基本的には、筋肉の緊張をほぐしてやわらげる効果があるので食いしばりが強くて顎(あご)が開かない人に最適です。

6-4.寝ている間の食いしばりについて

Q.眠っている間に歯を強く食いしばっているようです。マウスピースは歯医者で作ってもらいましたが、そのほかにも改善する方法はありますか?

A.「4.食いしばりの改善法」でご紹介した方法をぜひ試してください。ただし、「改善しなければ!」と、力を入れすぎて自分を追い込むとストレスになってしまいます。急がず気持ちに余裕を持って行いましょう。

6-5.意識改善法について

Q.パソコンやデスクに「食いしばり注意!」と書いた付箋(ふせん)紙を貼るなどの意識改善方法は、本当に効果があるのでしょうか。

A.意識改善方法は、「認知行動療法」「リマインダー法」と名付けられている効果のある方法です。食いしばりは無意識で行ってしまうので、目に付く場所に貼り食いしばりをやめるように心がけましょう。習慣にすると無意識に食いしばりをやめるように自分でコントロールできます。

まとめ

食いしばりの原因・改善・治療法などがおわかりいただけたかと思います。食いしばりは無意識のうちに行ってしまうので、気が付いていない人もいるのです。頭が痛い・顎(あご)やこめかみがだるい・肩こりや首こりがあるなどの悩みを抱えている人は、もしかしたら食いしばりの可能性もあります。放置すると歯や口くう内に悪影響を及ぼすだけではなく、体にも悪影響が出てしまうのです。セルフチェックで当てはまる項目があったら、一度歯科の診察を受けてくださいね。