「現代病」と呼ばれる味覚障害の実態とは? 症状や治療法を一挙公開

味覚障害の実態は? 症状や治療法を一挙公開

味覚障害にお悩みではありませんか? 最近は若い年齢層の患者も増えてきているのが現状です。味覚に異常が起こると、食べる喜びが失われ、食欲をなくしてしまう人も多くなります。放置しておくと危険な場合もあるため、早めに原因を突き止めて治療しましょう。この記事では、味覚障害の症状や原因・治療法などをまとめてご紹介します。

この記事を読むことで、味覚障害という病気について分かるはずです。ぜひ参考にして適切な対処をしてください。

味覚障害の基礎知識

まずは、味覚障害についてご紹介します。

1-1.味覚障害とは

味覚障害とは、味覚に異常が起こっている状態のことを言います。「味が薄く感じる」というような感度の低下から、「まったく味がしない」というような感度の消失まで、症状はさまざまです。また、特定の味だけ感じなくなる場合や、本来と違った味に感じるという症状も、味覚障害の恐れがあります。

1-2.メカニズム

食べものを口に含むと、物質が舌の「味蕾(みらい)」に入り込み、その中にある味細胞(みさいぼう)が、味覚神経を通して大脳へ信号を送ります。大脳の味覚中枢が信号を受信すると味が判断されるというメカニズムです。味覚障害は、この伝達経路が何らかの異常をきたすことで起こります。

1-3.なりやすい人の特徴と患者数

現在、味覚障害に悩む患者は数十万人以上います。ただし、自分が味覚障害であることに気づいていない人も含めると、さらに多いことが予想されるでしょう。特になりやすいのは、以下のような特徴の人です。

  • 生活が不規則である
  • 栄養バランスが偏っている
  • ストレスをためこみやすい
  • 日常的に薬を飲んでいる
  • 無理なダイエットをしている

味覚障害の種類と症状

味覚障害の症状についてまとめました。

2-1.主な症状

個人差はありますが、主な症状は以下のとおりです。

  • 薄い味だと分からない
  • 味がまったく分からない
  • 何も食べていなくても苦みを感じる
  • 特定の味だけ分からない
  • 甘いものを苦く感じるなど、味の錯覚がある

2-2.分類

味覚障害はいくつかのタイプに分類されます。

  • 味覚減退:食べものの味が分かりにくくなる、味の感度が鈍くなる
  • 自発性異常味覚:何も口にしていないのに、苦みや渋みなど不快な味がする
  • 解離性味覚障害:甘み・苦み・酸味・うまみ・塩味のうち、特定の味覚だけ感じなくなる
  • 異味症:本来の味と違った味に感じてしまう
  • 悪味症:何を食べても嫌な味に感じる

味覚障害の原因と考えられる病気

味覚障害はなぜ起こるのでしょうか。

3-1.主な原因

最も多いのが「亜鉛の不足」によるものです。亜鉛が不足することで味蕾細胞の新陳代謝が悪くなり、働きが低下します。そのほかにも、加齢や何らかの疾患によって唾液の分泌量が低下することも、原因の一つです。唾液は味の成分を溶かして味蕾(みらい)へ運ぶ役割を果たしているため、唾液の量が少なくなると味を感じにくくなります。

3-2.考えられる病気

味覚障害を起こす病気はいくつかあります。

3-2-1.口内の病気

まず思いつくのが口内の病気でしょう。代表的なのが舌炎です。味蕾(みらい)の部分が炎症を起こすことで、味の見分けがつきにくくなります。炎症の原因はヤケドやウイルス感染などです。そのほかにも、ドライマウスが原因になっていることもあります。唾液の分別が減少し、口腔(こうくう)粘膜の水分が失われて起こる疾患です。ドライマウスの原因には、食生活や生活習慣病・ストレス・薬の副作用などがあります。

3-2-2.全身性の病気

全身性の病気で最も多いのが糖尿病です。糖尿病によって合併症を引き起こすと、味覚を伝達する神経が冒されて味覚障害につながります。そのほかにも、貧血によって鉄分が不足すること、脳梗塞や脳出血によって脳に障害が起こることが原因で味覚障害が生じることもあるのです。

3-2-3.心因性の病気

ストレスやうつ病など心因的な原因から味覚障害が起こることもあります。この場合、味覚機能に問題はないため、原因を突き止めるのが困難になるでしょう。抗うつ薬や精神安定剤・睡眠薬が味覚障害を起こす原因になることもあるため、治療は慎重に行う必要があります。

3-3.放置するとどうなるのか?

放置すると、最後には味がまったく分からない状態になってしまいます。何を食べてもおいしく感じられないため、食事の時間が憂うつなものになってしまうでしょう。味覚障害は、軽度のうちに治療を開始すれば比較的簡単に治る病気です。しかし、治療開始が遅れると、その分、長期にわたる治療が必要になってしまいます。

味覚障害の治療

治療法についてご紹介します。

4-1.病院へ行くべき症状とは?

風邪やストレスなどで一時的に味覚障害を起こす場合もあります。しかし、症状が長く続くようであればできるだけ早めに病院を受診してください。早期治療が早期改善につながります。

4-2.何科を受診するのか?

味覚機能検査を受けることができるのは、耳鼻咽喉科や味覚専門外来です。症状や原因によっては内科や歯科・口腔(こうくう)外科・心療内科・精神科などでも治療が必要になります。まずは原因を突き止めるためにも、味覚障害の専門医による診断を受けるのがおすすめです。

4-3.歯科での治療について

原因が虫歯や歯周病・ドライマウスなどの場合は、歯科での治療が必要になります。歯石の除去などを行い、口腔(こうくう)環境を改善するための治療が行われることになるでしょう。軽度の味覚障害であれば、一般的な歯科でも治療可能な場合もあります。まずは受診して相談してみてください。

4-4.検査・診断方法

味覚障害の検査方法は、主に2つあります。

4-4-1.電気味覚検査

微量の電流で舌を刺激し、神経の反応を調べる検査です。この検査ではどの部分に障害が起きているかを特定できます。

4-4-2.ろ紙ディスク法

さまざまな味の溶液に浸したろ紙を舌にのせ、味覚の感じ方を調べます。味ごとに5段階の濃度のものを用意するため、どの程度の味覚を感じることができるのかを調べることが可能です。

4-5.治療方法

原因によって治療方法は異なります。亜鉛欠乏症が原因の場合は、食生活の改善や薬剤の使用によって亜鉛を摂取することが必要です。唾液の分泌量が減少している場合は、唾液分泌促進剤の投与や洗口剤を用いることになるでしょう。心因性の場合は、対症療法に加えて心療内科や精神科での診察を受けることになります。

4-6.手術・入院・費用について

味覚障害の原因や程度によっては、手術による治療が必要になる場合もあります。最も多いのが、重度の歯周病による味覚障害です。この場合、歯根などにあいてしまった穴をふさぐ手術や根管治療が必要になります。保険が適用されるため10,000円程度で治療できますが、入院が必要な場合はさらに費用がかかることになるでしょう。

4-7.投薬について

亜鉛不足による味覚障害には、亜鉛製剤が使われます。服用と同時に食生活を見直すことで改善に向かう可能性が高いでしょう。亜鉛は食品からも摂取可能な物質であるため、副作用が少ないという点が特徴です。一般的には、飲み始めてから3か月程度で味覚の回復が期待できると言われています。

4-8.注意点

味覚障害は、病院での治療と同時に普段の生活習慣も見直す必要があります。「病院に通っているから大丈夫」と思って気を抜かず、普段からセルフケアを怠らないようにしましょう。味覚障害は長引けば長引くほど精神的にもつらくなる病気です。少しでも早く完治するよう、自分自身も努力しましょう。

味覚障害をセルフケアしよう!

では、味覚障害のセルフケア方法をご紹介しましょう。

5-1.食事と栄養

味覚障害は亜鉛の欠乏によって起こることが多いため、亜鉛を摂取することで症状の改善が見込める場合もあります。亜鉛は体内で作り出すことができないため、食べものから摂取する必要があるのです。亜鉛はカキなどの貝類や海苔(のり)・昆布・にぼし・レバーなどに多く含まれています。毎日の食事に取り入れていきましょう。亜鉛と一緒にビタミンCを摂取すると吸収がよくなるため、果物なども積極的に食べるようにしてください。

5-2.口内環境を清潔に!

味覚障害の原因になる舌炎は、口内環境が悪化することで起こる場合もあります。普段から口の中を清潔に保つことも、大切なセルフケアです。歯科で正しい歯みがきの方法を指導してもらい、定期的に検診を受けるようにしましょう。

5-3.NG行為とは?

味覚障害を改善するために、セルフケアは非常に重要です。しかし、深く考えすぎるとストレスの原因になります。ストレスをためこむと味覚障害を引き起こすことがあるということを忘れないでください。逆効果にならないよう、ある程度力を抜くことも大切です。

味覚障害に関するよくある質問

「味覚障害について知りたい」という人が感じる疑問とその回答をまとめました。

Q.子供も味覚障害になりますか?
A.子供の3割が味覚障害を持っていると言われています。ジュースやファーストフードなどを好むこと、野菜の摂取が少ないことなどが原因です。

Q.鼻が詰まると味覚が分からなくなるのはなぜですか?
A.味覚と嗅覚は深い関係にあります。味とにおいが一つに統合されることによって風味を味わうことができるため、鼻詰まりによって嗅覚が低下していると味覚障害が起こりやすくなるのです。

Q.病気の治療で長期間薬を飲んでいます。どのような薬が味覚障害の原因になりますか?
A.血圧を下げる薬や抗生剤・アレルギーの薬などは、亜鉛の吸収を阻害します。長期的に服用している人は味覚障害を起こしやすいでしょう。

Q.亜鉛が不足していると、味覚障害以外にも何らかの症状が出ますか?
A.抜け毛が多くなる・爪が変形する・肌が荒れる・視力が落ちる・風邪をひきやすくなるなどの症状が現れます。味覚障害とこれらの症状が併発した場合、亜鉛不足のサインである可能性が高いでしょう。

Q.加齢によって味覚障害が起こりやすくなるのはなぜですか?
A.高齢になると感覚器の機能が衰えるためでしょう。また、ほかの病気で薬を飲んでいることが多いことも関係しています。

まとめ

いかがでしたか? 味覚障害の原因や症状・治療法などをまとめてご紹介しました。味覚障害が現代病と呼ばれるようになった理由には、私たちの食生活や生活習慣が大きく関係しています。若者にも増えている味覚障害を予防するために、どのように気をつけて生活するべきか知ってください。そして、少しでも異変を感じたら早めに医療機関を受診しましょう。