歯茎(はぐき)が腫れる・歯磨きをすると歯茎(はぐき)から血が出るなど、悩みを抱えている方は多いでしょう。歯茎(はぐき)は大切な歯を支えている土台です。歯茎(はぐき)が弱くなると、炎症が起こりやすくなります。歯肉(しにく)の炎症は、「歯肉炎」になっている証拠です。歯肉炎を放置すれば状態が悪化します。最悪なケース、自分の歯がなくなる可能性もあるでしょう。そこで、本記事では、歯肉炎の基礎知識や原因・種類・セルフチェック・治療法・セルフケアなど詳しく説明します。
この記事を読むことで、歯肉炎について詳しく知ることができ、正しい治療やセルフケアができます。歯肉炎について知りたい方や治したい方は、ぜひチェックしてください。
1.歯肉炎の基礎知識
歯肉炎を治すためには、定義やメカニズムなど基礎知識を知ることが大切です。基礎知識を習得したうえで、正しい治療法を見つけていきましょう。
1-1.歯肉炎の定義
歯肉炎は歯茎(はぐき)に炎症が起きている状態です。歯周病と間違われることもありますが、歯肉炎は歯周病の初期段階になります。歯茎(はぐき)が腫れる・歯磨きのときに出血するなどが主な症状です。しかし、歯肉炎の場合は痛みがありません。そのため、初期段階に気づかず、そのまま歯周病に発展するケースが多いのです。
1-2.歯肉炎のメカニズム
歯肉炎は口の中に歯垢と呼ばれる細菌の塊が増殖することで、歯肉(しにく)に炎症が起きた状態を指します。プラークは本来、健康的な口腔(こうくう)内にもあるものです。しかし、プラークの量が多くなると、口腔(こうくう)内の細菌バランスが崩れます。結果、歯の根元の肉=歯肉(しにく)に炎症が起こるという仕組みです。
1-3.歯肉炎になりやすい人・患者数
生活習慣が乱れている人や食生活が偏っている人が歯肉炎になりやすいです。口腔(こうくう)内のバランスが崩れやすい生活習慣は、歯肉炎・歯周病を発生させます。日本生活習慣病予防協会によると、歯肉炎および歯周疾患の患者数は、およそ331万5000人です。20歳代でおよそ7割、30~50歳代でおよそ8割、60歳代はおよそ9割の有病率になります。
1-4.放置するとどうなるか?
歯肉炎を放置すると歯周病になります。歯周病は歯を支える部分が溶けてしまい、歯がぐらぐらする病気です。重度の歯周病=歯槽膿漏(しそうのうろう)になると、歯が抜けてしまいます。歯肉炎になっても適切な治療・ケアをしていけば、歯周病を防ぐことが可能です。
1-5.歯周病との違い
歯肉炎は歯肉(しにく)・歯茎(はぐき)の部分に炎症が起きる症状を指しています。歯肉炎の段階では、歯と骨を結びつけている組織にまで影響はおよびません。しかし、その組織まで悪影響がおよび、骨が溶け出すと歯周病になります。歯肉炎を悪化させた状態が歯周病と思ってください。
1-6.口臭との関連性
歯周病は口臭の原因の1つです。つまり、歯周病の初期段階である歯肉炎は、口臭を引き起こす要因といえます。歯を支えている骨が溶けると、歯と歯茎(はぐき)の間にあるみぞが深くなるでしょう。深くなるみぞに、ガスを発生させる細菌が繁殖します。歯肉炎の段階ではさほど口臭は気になりませんが、歯周病ではひどい口臭が出るというわけです。口臭も歯肉炎の症状の1つといえます。
2.歯肉炎の原因と種類
歯肉炎は、一体どのような原因が考えられるのでしょうか。原因と歯肉炎の種類について詳しく説明します。治したい方は、原因を突き止めてください。
2-1.歯肉炎の原因
歯肉炎の原因は、口の中に住んでいる細菌・プラークです。プラークの量が増えることで、歯肉炎が起きます。プラークを取りのぞくには、歯ブラシやデンタルフロスを使わなければなりません。また、プラークが大量発生する原因は、日ごろの生活習慣にあります。きちんと歯磨きをしていなかったり、砂糖が多く含まれている食べものばかり食べるのが、プラークが増える主な原因です。
2-2.歯肉炎の種類
歯肉炎の種類は、主に、単純性歯肉炎と複雑性歯肉炎の2種類があります。それぞれの特徴や症状をきちんと把握しておきましょう。
2-2-1.単純性歯肉炎
歯肉炎のほとんどが単純性歯肉炎です。プラークの付着した歯肉(しにく)が細菌によって起こる炎症になります。そのため、原因になるプラークそのものを取りのぞいていけば、症状が軽減するものです。症状としては、口腔衛生状態の悪化により、口の中がネバネバしたり、歯茎(はぐき)から出血したりします。
2-2-2.複雑性歯肉炎
複雑性歯肉炎は、全身性の因子によって起こる歯肉炎です。てんかんなどの薬の副作用によって起こるケースもあります。痛みはありませんが、歯茎(はぐき)に炎症が起こり赤く腫れあがる症状です。また、ストレスや喫煙・栄養障害なども関与している可能性があります。
2-2-3.そのほかの種類
そのほかの種類としては、妊娠性・ヘルペス性・急性懐死性・慢性剥離性が挙げられます。それぞれの特徴を以下にまとめてみました。
- 妊娠性:女性ホルモンのバランスが崩れることで起こる歯肉炎。妊娠期の女性に多い
- ヘルペス性:ヘルペスウイルスを持つ人の接触・飛沫(しぶき)感染で起こる歯肉炎
- 急性懐死性:急に口腔(こうくう)内の細菌が増えることで起こる歯肉炎
- 慢性剥離性:ストレスや免疫力の低下が原因で起こる歯肉炎。女性に多い
3.歯肉炎のセルフチェック法
自分が歯肉炎になっているかどうか簡単に調べる方法があります。どのような症状が出ているのか、改めて見直しながらチェックしてみてください。
3-1.症状
歯肉炎の主な症状は3つあります。それは、「歯肉が赤く腫れあがること」「よく歯茎(はぐき)が出血すること」「歯茎(はぐき)が赤紫色になること」です。特徴は、痛みがないことになります。痛みはないけれど歯茎(はぐき)からよく出血する方は、歯肉炎になっている可能性が高いです。また、健康的な歯茎(はぐき)はピンク色をしています。歯肉炎になると血流が悪くなるため、歯茎(はぐき)が赤紫色になるのです。
3-2.自己診断チェック方法
自分で簡単にできる歯肉炎チェック項目を以下に挙げてみました。いくつ当てはまるのか、チェックしてみてください。
- 歯茎(はぐき)が赤く腫れている
- 歯茎(はぐき)の色が赤紫になっている
- 歯と歯の間に食べかすなどが詰まりやすい
- 歯磨きのときに歯茎(はぐき)から血が出る
- 歯茎(はぐき)がやせてきた
- 最近、きちんと歯磨きをしていない
- 甘いものや炭酸飲料ばかりとっている
- 口臭が気になる
以上の項目に1つでも当てはまる方は、歯肉炎になっている可能性が高いです。3個以上の方は歯周病に進行している可能性があるため、すぐに病院を受診しましょう。
4.歯肉炎の治療について
歯肉炎の原因がわかれば、適切な治療法もわかります。症状を軽減させ治すためにも、歯肉炎の治療法をチェックしておきましょう。
4-1.病院へ行くべき症状
歯周病の初期段階である歯肉炎のうちに、病院へ行き治療を受けるのが理想的です。「まだ大丈夫」と思っていては、すぐに症状が悪化してしまいます。歯茎(はぐき)が赤く腫れる・出血するなど症状が目立ち始めたら、すぐに病院へ行ってください。初期段階で治療を始めれば、治療期間も短く済みます。
4-2.何科へ行けばいいのか?
歯肉炎は歯科の担当になります。歯茎(はぐき)の炎症になるため、歯や歯茎(はぐき)に詳しい歯科医師に診てもらいましょう。受診する際は、自分に起きている症状や気になるところを具体的に伝えてくださいね。
4-3.検査・診断方法
歯肉炎の検査方法は、基本、歯科医師による視診(ししん)です。どの部分が出血しているのかチェックします。また、触診で歯が揺れ動くかどうかも確認するでしょう。さらに、細かい細菌の数値を調べるために、顕微鏡を用いてプラークの付着度などもチェックします。歯肉炎か歯周病になっているかどうかは、歯周ポケットの検査進行度合いで判断することになるでしょう。健康的な歯周組織は0.5~2ミリメートル、歯周炎になると2~5ミリメートル、初期歯周病は3~5ミリメートルになります。
4-4.治療方法
歯肉炎が悪化している場合、歯周病の原因になる歯石(しせき)を取りのぞき、歯茎(はぐき)の炎症を抑える治療をおこないます。スケーリングという歯石(しせき)除去が主な方法です。軽症の場合は、プラークコントロールなどの早期治療になります。プラークコントロールとは、歯に付着したプラークの量を減らすことです。詳細は【5-1.プラークコントロール】をチェックしてください。歯医者での治療と同時に、正しい歯磨きの仕方や生活習慣改善のための指導を受けることになるでしょう。
4-5.手術・入院費用について
歯周病がスケーリングでも改善できない場合、フラップ手術を受けることになります。フラップ手術は外科的治療法の1つであり、歯肉を切開して歯石(しせき)を取りのぞく方法です。炎症で破壊された歯槽骨(しそうこつ)を整えていきます。歯槽骨(しそうこつ)とは、歯を支えている骨のことです。フラップ手術は1か所で10万~15万円になります。保険が適用されれば、3割負担で1か所およそ3,000円になるでしょう。
4-6.投薬について
歯医者でおこなう投薬治療には、歯肉炎の原因になるプラークを除去する薬を使います。しかし、薬は一時的な回復になるため、根本的な解決にはつながりません。根本的に解決するためには、歯医者でのメンテナンスと同時にセルフケアをおこなう必要があります。後ほど、【5.歯肉炎のセルフケア】にて詳しく説明するので、ぜひチェックしてください。
4-7.注意点
歯肉炎を治療する際、歯肉炎・歯周病の知識を持っている歯医者を選んでください。歯医者によって、得意分野があります。治療と同じく、予防歯科をおこなっている歯医者がおすすめです。予防歯科は歯肉炎・歯周病・虫歯になりづらくする治療を指しています。予防歯科をおこなっている歯医者を選べば、歯肉炎の再発を防ぐことが可能です。
5.歯肉炎のセルフケアについて
歯医者の治療と同時に、自分でできるセルフケアを続けていかなければなりません。セルフケアは、再発予防・歯肉炎症状の軽減につながります。
5-1.プラークコントロール
歯に付着したプラークの量を減らすことがプラークコントロールです。プラークコントロールによって、歯肉炎の症状を抑えることができます。プラークコントロールのポイントは、適切なブラッシングと歯医者での治療です。適切なブラッシングは自分でできますが、果たして正しいブラッシングをしているかどうかわかりませんよね。不安な方は、歯医者で正しい歯磨きの仕方を教えてもらいましょう。
5-2.歯ブラシの選び方
歯ブラシは先端の細いタイプを選んでください。なぜなら、先端が細い歯ブラシは歯の間にはさまっているプラークを取りのぞきやすいからです。けれども、歯の表面を磨く力が弱いデメリットを持っています。そのため、ブラシの密度が高いタイプを選びましょう。
5-3.食べもの・ガムなど
歯肉炎のセルフケアには食生活の改善が重要です。砂糖が多く含まれている食べもの・飲みものは、プラークを増やす原因になります。逆に、繊維質が豊富なにんじんやごぼうなどは、プラークの増殖を抑えてくれる食べものです。繊維質は口腔(こうくう)内をキレイに掃除する効果もあります。また、ガムをかむのもいいでしょう。キシリトール成分が含まれているガムは口腔(こうくう)環境を改善します。雑菌を洗い流す唾液も増やしてくれるのでおすすめです。
5-4.そのほか生活習慣で気をつけること
「疲れているから」と歯磨きを怠っていませんか? 歯磨きを1回でも怠ると、歯の間に食べかすがたまり、歯石(しせき)が付着してしまいます。また、睡眠不足やストレスにも注意してください。睡眠不足になると、抵抗力が落ちてしまいます。結果、細菌に感染し歯肉炎になりやすくなるわけです。日ごろの生活習慣が歯肉炎に影響するため、見直さなければなりません。
6.歯肉炎にかんしてよくある質問
歯肉炎にかんしてよくある質問を5つピックアップしてみました。
6-1.おすすめの歯ブラシとは?
おすすめの歯ブラシは、歯科医にも愛用されている「ルシェロ」です。輸入雑貨店や通販で手に入ります。1本300円なので、ぜひ手に入れてブラッシングをしてください。
6-2.正しいブラッシングとは?
まず、歯ブラシは鉛筆を持つようににぎってください。歯ブラシを横にして、水平に1つずつ歯を磨いていきます。歯と歯の間や歯の根元はプラークがたまりやすいので、毛先を優しく当てながら磨いてください。力を入れすぎると刺激が強すぎるため、加減に注意しましょう。
6-3.歯肉炎・歯周病を防ぐポイントとは?
歯肉炎・歯周病を防ぐポイントは、歯医者での定期検診です。定期検診は早期発見・早期治療のきっかけになります。定期検診の目安は3か月~半年に1回です。セルフケアでは除去できない歯石(しせき)を定期検診で取りのぞいてもらいましょう。
6-4.どんな歯磨き粉を使えばいいのか?
歯肉炎になっているとき、どんな歯磨き粉を使えばいいのか悩みますよね。おすすめしたいのが、発泡剤やミントが入っていないタイプです。磨きが不完全でも、ミントは清涼感、発泡剤は泡立ちによって磨いたように感じやすくなります。きちんと磨くためにも、発泡剤やミントが入っていない歯磨き粉を選びましょう。
6-5.歯茎(はぐき)が痛くなったときの対処法とは?
歯茎(はぐき)が痛くなったとき、歯肉炎が悪化している可能性があります。痛みを抑えるために、ぬれタオルを患部に当ててください。直接氷を口の中に入れると刺激が強すぎるため、痛みが悪化します。間接的に冷やしつつも、できるだけ早めに歯医者を受診しましょう。
まとめ
歯肉炎は歯周病の初期段階です。歯茎(はぐき)が赤く腫れる・血が出てくる・歯茎(はぐき)が赤紫になっている場合は、歯肉炎になっています。初期段階のうちに歯医者で治療を受け、自分でできるケアをしていかなければなりません。歯肉炎の原因は、プラークの繁殖・不規則な生活習慣です。歯医者でセルフケアでは取れない歯石(しせき)を除去してもらい、生活習慣を改善していきましょう。日ごろのおこないが、歯肉炎治療のポイントになります。そして、3か月~半年に1回の定期検診を受けていきましょう。きちんと定期検診を受けていけば、初期治療ができ、予防効果が高まりますよ。