毎日おいしいご飯を食べるためには、健康な歯の維持を欠かすことはできません。しかし、年をとると徐々に歯は自然と抜け落ちていきます。「歯には寿命があるから、努力してもいずれは抜けてしまう」と思って諦めてしまっている方はいないでしょうか。
歯の寿命は確かにあります。しかし、努力しだいで、年をとっても健康な歯を維持することは可能です。歯の寿命をのばす方法はいくつか存在します。
1.平均的な歯の寿命とは
「高齢になっても、健康な歯がたくさん残っている」という方はさほど多くありません。しかし「歯の寿命は何年?」と聞かれたとしても答えられる人は少ないと思います。まずは歯の寿命は何年くらいなのかを知ることから始めましょう。
1-1.歯の寿命はおよそ60年
人間には、上下合わせて32本の歯があります。そのうち、一番奥の歯は親知らずですから、中には抜いてしまっている人もいるでしょう。仮に上下左右4本の親知らずを除くと、全部で28本の歯があることになります。
歯の寿命は、性別や生えている場所によって異なるものの、全体としては大きな違いはありません。過去、歯科医師が積み重ねてきたデータによると、歯の寿命は50~60年前後。前歯よりも奥歯の方が早く抜けてしまいやすいことがわかっています。
たとえば、親知らずを除いて一番奥にある歯である「第二大臼歯」は、最も寿命が短く上下左右ともおよそ50年です。一方、最も長持ちする下あごの前歯(中切歯)は、66年ほどたつと抜けてしまいます。
1-2.40歳を過ぎると歯が抜け始める
歯が抜けていくといっても、まだ20~30代の若年者にとっては、あまり自覚できないことかもしれません。「虫歯か歯周病にならない限りは大丈夫なんじゃないの?」と危機感を持っていない方も多いでしょう。子どものころ、乳歯から永久歯に生え変わったとき以外に歯が抜けた経験がないため「歯はいずれ抜けるものである」という意識が芽生えにくいのです。
健康な歯がいつまでも続くものではないと自覚するのは、40代に入ったころでしょう。多くの方は、40歳を過ぎると徐々に歯が抜け始めることになります。平均的には、45歳から50歳に至るまでに、なんと3本もの歯を失ってしまうといわれているのです。
1-3.70歳になると半分の歯しか残らない
55歳から60歳にかけては、平均で5本もの歯を失うことになります。歯を失うペースは加齢とともに徐々に加速していき、65歳から70歳の間にはさらに8本もの歯がなくなってしまうのです。
40歳から数えると合計で16本。なんとすべての歯の半分を失ってしまう計算になります。イメージしやすいように、上の歯か下の歯、どちらかが全部なくなった状況を想像してみてください。日本人の平均寿命は男性が80歳、女性が86歳です。歯の寿命が尽きてから10年以上もの歳月を生きなければならないことになります。しかも、その間さらに歯が抜けるのが止まることはありません。
2.歯を失う主な原因
「70歳を過ぎても健康な歯がたくさんある高齢者がいるのはどうして?」と疑問に思った方もいるでしょう。実は、本来歯には「寿命」に相当するものはありません。我々が普段の生活の中で行っているさまざまなことが歯の抜ける原因となり、結果として歯に「寿命」を作り出していしまっているのです。この章では、歯を失うことになる主な原因を見ていきましょう。
2-1.虫歯・歯周病
歯が抜けてしまう原因の代表例は虫歯と歯周病です。歯周病は歯が抜ける原因の第一位。実に4割もの歯が歯周病によって失われています。その次に多いのが虫歯による抜歯です。歯周病には及ばないものの、こちらも原因全体の3割を占めています。
2-2.歯をかみ合わせたことによる衝撃
この原因は、意外に思われる方も多いのではないでしょうか。歯にとって最も大きな負担がかかるのは、力を入れるために食いしばったときです。繰り返し与えられた大きな負荷に耐えられず、歯が割れてしまうことも多くあります。
ほかには、歯ぎしりや誤ったかみ合わせが歯にとっての負担になることも。普段はなんでもないと思っていることが、長年のうちに積み重なって歯を破壊してしまうこともあるのです。
2-3.誤った生活習慣やストレス
不摂生が体にとっての負担になるように、歯への負担になることもあります。歯、およびその歯を支える歯茎も我々の大切な体の一部です。暴飲暴食や夜ふかし、日常生活のストレスなどによって健康が妨げられることは十分にあります。
3.歯の寿命をのばすためにできること
将来、入れ歯に頼った生活をしたくないのであれば、可能な限り歯の寿命をのばすしかありません。歯の寿命をのばすためには、歯が抜けてしまう原因をできる限り改善するのが一番です。
3-1.虫歯と歯周病を予防するプラークコントロール
プラークコントロールとは、歯に歯こうをためないために行うケアのことを言います。虫歯や歯周病は、プラークと呼ばれる口内細菌の塊が原因で起こるものです。原因となるプラークを適切に除去していれば、歯の健康を保つことができます。
具体的には、毎日の歯磨きを怠らないこと、そして歯間のケアを行うことです。年齢を重ねると、徐々に歯茎が衰えてしまうために、歯と歯茎との間に空間が生まれ、プラークがたまりやすくなってしまいます。適切にプラークを除去し、ときには歯科検診を受けるなどして歯の健康を維持してください。
3-2.かみ合わせを治療して歯への負担を軽減
誤ったかみ癖を治して歯への負担を減らすには、かみ合わせを治療するのが一番です。かみ合わせの治療というと、歯並びを治す「歯列矯正」を思い浮かべるかもしれません。しかし、歯列矯正が見た目をよくするために行われるのに対して、かみ合わせの治療は歯の高さなどを調節し、すべての歯が正しくかみ合うことを目的に行われます。
かみ合わせを治療すれば、歯への負担が小さくなるばかりでなく、がく関節症など、歯が原因で起こる病気を予防することも可能です。
3-3.食事・生活習慣の見なおし
偏った食生活や、誤った生活習慣を正すことも、歯の寿命をのばすのに役立ちます。特に糖分を多く含む食品は、歯の表面を保護するエナメル質にとっては大敵です。甘いものを控えて、バランスのとれた食事をとることで、虫歯や歯周病のリスクを減らすことができるでしょう。規則正しい生活習慣は、免疫力を高めるのに有効です。
また、喫煙の習慣がある人は、将来のことを考えて禁煙に挑戦してみてはいかがでしょうか。タバコのヤニが歯について黄ばんでしまうばかりではなく、タバコを吸うと歯周病が進行しやすくなることがわかっています。
まとめ
この記事では、年をとっても歯の健康を維持したいと考えている方のために、歯の寿命をのばす方法をご紹介してきました。健康な歯を一本でも多く残すためにはどんなことをしたらいいのか、最後にもう一度復習しておきましょう。
- 平均的な歯の寿命とは
- 歯を失う主な原因
- 歯の寿命をのばすためにできること
適切なプラークコントロールとかみ合わせ治療、そして生活習慣の改善が歯の健康を維持するための決め手です。どれも決して難しいことではありませんが、毎日継続していくのは簡単ではありません。一度失ったら二度と取り戻すことのできないものだからこそ、日々の手間を惜しんではならないのです。