顎関節症の放置は危険!顎関節症の症状や原因、治療法など徹底解説

「顎がはずれる」「口が大きく開かない」「顎が鳴る、痛い」など、顎にかんする悩みを持っている人は多いでしょう。顎が気になる場合、「顎関節症」という症状が考えられます。もし、顎のトラブル、顎関節症を放置すれば、さらに症状が悪化するでしょう。的確な処置をするためにも顎関節症について知ることが大切です。

  1. 顎関節症とは?
  2. 顎関節症の症状について
  3. 顎関節症の種類と症状について
  4. 顎関節症の原因について
  5. 顎関節症の治療方法について
  6. 顎関節症の予防方法、セルフチェックについて
  7. 顎関節症にかんしてよくある質問

この記事を参考にすれば、顎関節症の基礎知識を身につけて自分の症状に合った治療ができます。顎関節症について知りたい方、治したい方は必見です。

1.顎関節症とは?

顎の関節が痛い、顎がずれるなど不調を感じている人は「顎関節症」の可能性が高いです。顎の不調を治すためにも顎関節症の知識を身につけておきましょう。

1-1.顎関節症とはどんな病気か?

日本顎関節学会によると、顎関節症は「顎関節や咀嚼(そしゃく)筋のうずき、関節音、開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする慢性疾患郡の総括的診断名」と定義されています。また、顎関節症の病態には咀嚼(そしゃく)筋障害や靭帯(じんたい)障害、関節円板障害なども含まれているのです。つまり、顎が痛い、違和感がある、口があけづらいなど何かしらの不具合を感じるのが顎関節症になります。

1-2.顎関節症の主な症状と痛み

顎関節症の症状や痛み具合は人によってばらばらです。軽度の人は硬いものを食べるときだけ顎が痛むなど、時間がたったら顎の痛みが治まります。逆に重症になると顎の痛みだけでなく、めまいや食事が難しくなる、全身にまで痛みが起きるなど日常に支障をきたしかねません。

1-3.顎関節症の原因、メカニズム

顎関節の中には関節円板という軟骨があります。関節円板は筋肉や靭帯(じんたい)で支えられており関節頭が前方にずれると一緒に移動する仕組みです。しかし、関節円板を支えている筋肉が緊張状態だと、関節頭の動きと連動できなくなります。結果、口を動かすたびに顎が痛み、関節雑音などが発生するのです。主な原因としては、ストレス、歯ぎしり、かみ合わせなどがあげられます。

1-4.放置するとどうなるか

顎の不具合を放置すると顎関節症の症状がひどくなります。そして、顎関節症の手術を受けなければなりません。放置すればするほど治療費が高額になります。症状が悪化する前に病院を受診してください。

1-5.顎関節症になりやすい人

近年、顎関節症で悩んでいる人が増加傾向にあります。特に、多いのが20代~30代の女性です。なんと、女性は男性のおよそ2~3倍、顎関節症で通院している人が多いのだとか。なぜ、女性のほうが顎関節症になりやすいのか原因はいまだハッキリしていません。大まかな原因としては、女性のほうがストレス・緊張に敏感、男性よりも靭帯(じんたい)や骨格が弱い、女性ホルモンに関係しているのではないかといわれているのです。また、咀嚼(そしゃく)回数が少ないファストフードやコンビニ弁当といった食生活、不規則な生活習慣を送っている人ほど顎関節症になりやすい傾向があります。

2.顎関節症の症状について

顎関節症の代表的な症状を6つ紹介します。自分に当てはまる症状がないかどうか、確認しながらぜひチェックしてください。

2-1.顎が痛む

顎関節症で起こる痛みは顎だけではありません。顎周辺のほおやこめかみなど顔全体に痛みがやってきます。特に、食事時や会話の最中など顎を動かしているときに痛みを感じるという人が多いです。ちなみに、顎を動かさなくても痛みがある場合はほかの病気の可能性があります。

2-2.口を大きくあけられない

健康的な人は指3本ぶんか、または2本ぶん口の中にいれることができます。しかし、顎関節症になっている人は口を大きくあけることができません。顎を動かすと痛みが出てくるため、最初は口があけられたとしても後であかなくなる可能性があります。

2-3.顎からカクカク音がする(関節雑音)

顎からカクカク、ガクガクと音がすることを「関節雑音」といいます。関節雑音はカクカク、ガクガクのほかにもジャリジャリやミシミシなど人によって異なるでしょう。また、痛みがなく、症状が音だけの場合は顎関節症予備軍です。顎に負担をかけない規則正しい生活をすれば関節雑音が治ります。

2-4.かみ合わせに違和感がある

かみ合わせに違和感があるのも顎関節症の症状です。顎の関節や動きに不具合が出てくるとかみ合わせが悪くなります。今まで違和感はなかったのにかみ合わせが悪いと感じるのなら、顎関節症の疑いがあるといえるでしょう。

2-5.口を閉じられない

顎が完全にズレて口が閉じられなくなるケースがごく稀(まれ)にあります。口が閉じられない場合はすぐ病院に行かなければ治りません。

2-6.全身症状

顎付近に現れる症状だけが顎関節症とは限りません。たとえば、頭痛、肩こり、背中の痛み、腰痛、目の疲れ、虫歯、口の乾燥、呼吸困難、足・手のしびれなど全身にあらゆる症状が起こります。顎の不具合以外にも、全身に起きている症状がないかどうか確認してください。

2-7.顎関節症以外に考えられる病気

口の中や顎の近くにある部位の病気によって症状が現れるケースがあります。たとえば、歯・歯周組織、舌、唾液腺、神経などの病気です。また、脳腫瘍や脳卒中など脳の病気によって口が開かない、動かない場合もあります。

3.顎関節症の種類と症状について

顎関節症の症状や障害が起きている場所によって4つの種類にわけることができます。I型~IV型まで、それぞれどんな内容なのか詳しく説明しましょう。

3-1.筋肉の障害によって起こるタイプ(I型)

顎のまわりにある筋肉が緊張して固くなると血液の流れが悪くなります。結果、咀嚼(そしゃく)筋を中心に痛みが出てくるのです。筋肉の障害によって起こるタイプは主にストレスと疲労が原因になります。鈍い痛みや頭痛、肩・首などにも痛みが出てくるタイプです。

3-2.関節包、靭帯の障害によって起こるタイプ(II型)

関節包や靭帯(じんたい)は繊維組織と呼ばれるものです。顎関節の繊維組織に力が加わると痛みを感じます。また、顎を動かしたときに顎関節部が痛むのなら関節包と滑膜に炎症が起きている可能性が高いです。

3-3.関節円板の障害によって起こるタイプ(III型)

本来あるべき位置から関節円板がずれている状態になります。関節円板のずれを「関節円板前方転位」といい、「クリック」と「ロック」の2種類が考えられるでしょう。クリックは口を閉じると下顎頭から関節円板がはずれて「カクン」と音がします。ただし、口をあけたときには関節円板が本来の位置に戻るのです。一方、ロックは口をあけたときも関節円板が本来の位置に戻りません。そのため、口を大きくあけられない特徴を持っています。

3-4.変形性関節症によって起こるタイプ(IV型)

長時間、顎関節に強い負荷がかかると下顎頭の周辺に新しい骨が作られます。そのため、口をあけしめするとゴリゴリ、ジャリジャリと音がするのです。新しい骨の影響によって滑膜炎といった炎症が起こりやすくなります。

4.顎関節症の原因について

それでは、顎関節症の原因についてより詳しく解説しましょう。顎関節症を治すには、まず原因を突き止めることが大切です。

4-1.ストレス

筋肉の緊張による顎関節症があるように、「ストレス」は顎の不具合と深い関係を持っています。仕事や家庭、人間関係のストレスは筋肉を緊張させてしまうものです。できるだけ、ストレスと関係のない生活を送ることが大切なポイントになります。

4-2.かみ合わせ

悪いかみ合わせは顎関節症だけでなく、虫歯や歯周病、歯並びの矯正も関係しています。不良な歯列矯正・歯科治療から悪いかみ合わせを招くこともあるので注意してください。もし、歯科治療後にかみ合わせが悪くなったら歯医者に相談しましょう。

4-3.歯ぎしり

歯をカチカチならす、歯ぎしりなどのことを「プラキシズム」といいます。プラキシズムは顎関節症の原因の1つです。就寝中に歯ぎしりをすることでかみ合わせが悪くなるケースが増えています。

4-4.日常生活

日常生活で当たり前にしていることが、実は顎関節症を引き起こしている可能性があります。たとえば、顎や筋肉に負担をかける行動です。うつぶせ寝や顎の下に電話をはさむ、猫背、ほおづえをつく姿勢などは顎に負担をかけてしまいます。

4-5.硬いものを食べない

顎関節症は女性に多いといいましたが、近年若年層の発症率も高くなっています。理由の1つとしてあげられるのが「食生活」です。ファストフードやレトルト食品など柔らかいものばかり食べていると顎の筋力が低下します。よって、顎関節を支えるための土台が衰え顎関節症になりやすくなるのです。

4-6.その他

ほかにも、室内の冷房による歯の食いしばりや片側の歯ばかりで食べものをかむことなどあらゆる行動、動作が顎に負担をかけています。顎関節症を治すためにも、日ごろの生活を見直さなければなりませんね。

5.顎関節症の治療方法について

顎関節症の疑いがあるとき、どんな行動を起こせばいいのか悩みますよね。そこで、何科を受診すべきか、顎関節症の検査や診断、治し方など詳しく説明しましょう。

5-1.何科を受診すべきか

顎関節症の受診は歯科が一般的です。顎だけでなく全身に症状が出る場合もあるので、中には耳鼻科や整形外科を受診するケースもあります。しかし、顎関節症の疑いがあれば歯科への受診をすすめられるので安心してください。

5-2.検査、診断について

顎関節症の検査は主に問診・視診・触診です。問診では現在痛みが出ている箇所やアレルギーの有無、生活習慣など聞かれるでしょう。視診では正しい姿勢を維持できているかどうか、顔が左右対称かチェックします。そして、触診では実際に顎付近をさわって筋肉の緊張状態、動き、雑音を調べられるでしょう。また、診断は問診・視診・触診を踏まえ、画像診断や筋電図検査などの結果で判断されます。

5-3.顎関節症の治療法

病院で治療をおこなう際、検査結果や原因に基づいて治療がすすめられます。具体的な治療法は認知行動療法、物理療法、運動療法、スプリント療法(装具の装着)、薬物療法、外科療法です。病院での専門治療はもちろん大切ですが、最も重要なのは「セルフケア」になります。顎関節症は日常生活による影響が大きいため、セルフケア中心の治療になるでしょう。

5-4.顎関節症のマウスピースについて

保存療法としてマウスピースを使用するケースがあります。マウスピースとは歯のうえにかぶせる装置のことです。特に、プラキシズムといった歯ぎしり、食いしばりの傾向がある人はマウスピースによる治療がベストになります。マウスピースは歯を削ることがないため、自分の歯を守りながら治療ができる点がメリットです。ただし、自分の顎・歯の形に合ったマウスピースを装着しなければ効果がありません。

5-5.手術について

顎関節症の症状や状態が深刻化している場合、手術が必要になります。主な手術内容は関節腔洗浄療法(かんせつくうせんじょうりょうほう)と関節鏡手術(かんせつきょうしゅじゅつ)です。関節腔洗浄療法(かんせつくうせんじょうりょうほう)では、関節腔(かんせつくう)の中にある古い関節液を取りのぞきます。古い関節液は顎関節症を悪化させるものです。一方、関節鏡手術(かんせつきょうしゅじゅつ)は関節軟骨のでこぼこを整える手術になります。

5-6.注意点

顎関節症の治療はあくまでセルフケアです。専門的治療をしているから、手術をするからといって不規則な日常生活、顎に負担のかかる生活を送っていれば再び顎関節症になります。また、顎の痛みや不調を放置してはいけません。顎関節症は早期治療が大切なので、気になったときすぐに歯科を受診してください。

6.顎関節症の予防方法、セルフチェックについて

顎関節症に悩まされないためにも、予防法・セルフチェック法を把握しておきましょう。

6-1.セルフチェック法

  • あごが痛い、口があかない、カクカクと音がする
  • 食事の際、あごが痛くて食べものがかめない
  • 人差し指、中指、薬指の3本を縦(たて)に並べて口に入らない
  • 大きなあくびができない
  • 口をあけしめしたとき、耳のまわりから音がする
  • 食べ物をかむ、長時間の会話であごが疲れる
  • こめかみや耳、ほおに痛みを感じる
  • 最近、あごや首、頭を打ったことがある

以上の項目に1つでも当てはまれば病院を受診してください。顎関節症になっている可能性があります。

6-2.顎関節症の予防法

自分でできる顎関節症の予防はたくさんあります。たとえば、悪い癖、姿勢を正すことです。ほおづえをつきやすい人はできるだけ控えてください。唇をかむ、歯ぎしりをする、歯を食いしばる行動もNGです。さらに、過度なストレスを感じている人は上手にストレスと付き合いましょう。ストレス解消にリラックスできる方法を探すといいですよ。

6-3.生活習慣など

規則正しい生活習慣に正すだけで顎関節症の症状は和らぎます。睡眠をしっかりとる、栄養バランスのよい食事を心がける、適度な運動を続けてください。毎日決まった時間に寝起きをすることで、体内のリズムが整います。ストレスを感じにくい生活が送れるでしょう。

6-4.その他予防法、ケアなど

もし、かみ合わせが気になるのなら歯科治療のやり直しをおすすめします。顎に悪い癖を治すことはもちろん、専門的な歯科治療も大切です。たとえば、歯列矯正をしている人は器具を見直す、土台の顎がゆがんでいるのなら、顎を治してから歯の治療をしなければなりません。顎だけでなく、日ごろから歯のケアもおこなってください。

6-5.NG行為

顎の痛みが片側だけの場合、もう片方の歯で食べものをかむ人が多いです。しかし、片がわだけでかんではいけません。なぜなら、左右バランスが崩れ、歯が折れる、顎関節症状が悪化するなどトラブルが起きやすくなるからです。また、ガムをかむのもNG行為になります。

7.顎関節症にかんしてよくある質問

顎関節症にかんしてよくある質問を5つピックアップしてみました。不安を抱いている人、顎関節症が気になっている人はぜひチェックしてください。

7-1.顎関節症の治療を病院でする場合、費用はいくらかかるのか?

治療方法にもよりますが、費用の目安はおよそ5,000円~1万円です。マウスピースの装着となれば、製作費もいれて数万円かかるケースもあります。

7-2.顎がずれたときの治し方とは?

もし、顎がずれてしまったとき自分でもとに戻そうとしてはいけません。すぐ口腔(こうくう)外科、歯科、整形外科を受診してください。

7-3.下顎に痛みが…対処法とは?

下顎に痛みが発生した場合、虫歯の可能性が高いです。ただし、傷による炎症、または顎関節症になっている恐れもあるため、歯科を受診しましょう。

7-4.顎関節症は治るのか?

早期治療をすれば顎関節症は短期間で完治します。大切なのはセルフケアと早期治療です。放置すればするほど完治までの時間がかかるため、すぐに治療を始めましょう。

7-5.歯医者の選び方が知りたい

受診する歯医者の選び方は「患者さんの気持ちに寄り添ってくれるかどうか」に注目してください。患者さんの意思を無視した治療法は不安をあおるだけです。患者さんが安心できる説明、かつ納得のいく治療法かどうか歯科医師の対応などをチェックしましょう。

まとめ

顎関節症は放置するほど症状が悪化して日常生活に支障をきたす病気です。できるだけ、早く治すためにもなぜ顎が痛むのか、症状と痛む場所から原因を突き止めなければなりません。そして、歯医者などで適切な治療を受けながらセルフケアをしていきましょう。顎関節症は日常生活と密接につながっています。顎に負担をかけない生活こそ、顎関節症から脱出する大きなポイントです。